↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NOESISーノエシスー  作者: 月乃瀬
第一章 NOESIS覚醒編
PR
13/91

第十三話  母の声


夜が明けようとしていた。


東の空が僅かに白み始めている。


だが。


神崎蓮の胸には奇妙な違和感が残っていた。


⸻


平将門。


⸻


天城煌から聞かされた話。


怨霊王。


落武者の軍勢。


そして。


世界の裏側で動き始めた何か。


⸻


蓮は空を見上げた。


右目が微かに青く光る。


NOESISは観測を続けていた。


だが。


何かが足りない。


⸻


情報がない。


⸻


まるで重要なページだけが破り取られているようだった。


⸻


「母さん……」


⸻


その名を呟く。


神崎マリア。


NOESIS開発者。


そして。


既にこの世にいない人。


⸻


「神崎くん」


⸻


声がした。


月乃瀬澄華だった。


⸻


「準備はできた?」


⸻


白いワンピース。


朝の光を受けて静かに微笑んでいる。


⸻


「本当に会えるのかな」


⸻


蓮が言う。


⸻


「分からない」


⸻


澄華は首を振った。


⸻


「でも、伝説の巫女様なら何か知っていると思う」


⸻


◆

東北地方。

⸻


山奥だった。


⸻


舗装された道路は途中で消える。


獣道のような細い山道。


木々の隙間から射し込む朝日。


⸻


「こんな所に人が住んでるのかよ」


⸻


因幡剛が呆れたように言う。


⸻


「おれなら三日で遭難するぞ」


⸻


「二日だろ」


⸻


天城煌が笑う。


⸻


「やかましい!」


⸻


少しだけ空気が和らぐ。


⸻


だが。


澄華だけは真剣だった。


⸻


「もうすぐよ」


⸻


その言葉と同時に。


森が開けた。


⸻


古い家が一軒。


⸻


鳥居もない。


神社でもない。


寺でもない。


⸻


ただ。


そこに在る。


⸻


そんな家だった。


⸻


◆


⸻


縁側に一人の老婆が座っていた。


90歳は越えているであろう。

⸻


小柄な身体。


深い皺。


だが。


とても穏やかな顔をした老婆だった。


⸻


「来たかい」


⸻


老婆は言った。


⸻


「神崎マリアの息子」


⸻


蓮の身体が強張る。


⸻


初対面だった。


⸻


名前も言っていない。


⸻


だが。


老婆は知っていた。


⸻


「お前さんを待っていたよ」


⸻


◆


⸻


伝説の巫女さま。


⸻


それが人々の呼び名だった。


⸻


死者の声を聞く者。


魂を繋ぐ者。


⸻


現代では忘れ去られた存在。


⸻


だが。


確かに存在する。


⸻


「聞きたいことがあるんだろう?」


⸻


蓮は頷く。


⸻


「NOESISについて」


⸻


「母さんについて」


⸻


「全部だ」


⸻


老婆は目を閉じた。


⸻


静寂。


⸻


風が吹く。


⸻


木々が揺れる。


⸻


鳥の声が消える。


⸻


世界が息を止める。


⸻


◆


⸻


そして。


⸻


空気が変わった。


⸻


柔らかく。


優しく。


どこか懐かしい。


⸻


蓮の心臓が跳ねた。


⸻


知っている。


⸻


会ったことはない。


⸻


だが。


知っている。


⸻


忘れるはずがない。


⸻


「……蓮」


⸻


声がした。


⸻


涙が出そうになる。


⸻


その声を。


蓮は知っていた。


⸻


「母さん……?」


⸻


おがみさまの口が動く。


だが。


聞こえてくる声は別だった。


⸻


優しく。


暖かく。


懐かしい。


⸻


神崎マリア。


⸻


その人の声だった。


⸻


「蓮」


⸻


「突然のことで驚いたでしょう」


⸻


微笑むような声。


⸻


「でもね」


⸻


「母さんには」


⸻


「どうしても伝えなければならないことがあるの」


⸻


蓮は言葉を失う。


⸻


澄華も。


煌も。


剛も。


黙っていた。


⸻


ただ一人。


神崎マリアだけが語り始める。


⸻


「NOESISについて」


⸻


「あなたのお父さんについて」


⸻


「八尺瓊勾玉について」


⸻


「そして――」


⸻


少しだけ間が空く。


⸻


「25年前の話を」


⸻


風が吹いた。


⸻


木々が揺れる。


⸻


遠い記憶の扉が開く。


⸻


神崎マリアの瞳が。


ゆっくりと過去を見つめた。


⸻


「――あれは」


⸻


「母さんが十三歳だった頃の話」


⸻


◆


⸻


熊野大宮。


⸻


八尺瓊勾玉を祀る神社。


⸻


まだ。


世界が壊れる前の物語。


⸻


まだ。


徐福という男が現れる前の物語。


⸻


そして。


⸻


全ての始まり。


⸻


NOESISの神話。


⸻


神崎マリアの物語。


⸻


第一章


NOESIS覚醒編


完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。