第十話 白銀の瞳
満月の夜は好きだった。
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夜が最も深く、美しく澄む時間。
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人の願いが月へと届きそうになる時間。
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月乃瀬神社。
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参拝客の姿もない境内。
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澄み切った夜気。
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木々を揺らす風の音。
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そして。
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一本の矢。
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ヒュッ。
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乾いた音と共に矢が飛ぶ。
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真ん中。
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命中。
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続けて二本。
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三本。
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四本。
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外れない。
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境内の奥。
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八方向へ配置された的。
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その中心。
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月乃瀬澄華が立っていた。
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弓を引く。
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放つ。
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引く。
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放つ。
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まるで舞だった。
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流れるような所作。
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そして。
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最後の一射。
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八枚全ての的が中心を射抜かれる。
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静寂。
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澄華が小さく息を吐いた。
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「よし」
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満足そうに微笑む。
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「今夜の稽古も順調順調」
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弓を降ろす。
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片付けようとした。
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その時。
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止まる。
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風が変わった。
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(……いる)
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一人。
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二人。
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三人。
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違う。
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もっと。
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五。
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六。
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七。
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八。
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境内の外。
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木々の向こう。
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複数の気配。
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澄華は少しだけ首を傾げた。
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「こんな時間に参拝?」
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優しく笑う。
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「感心ね」
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木陰から男が現れる。
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高校生くらい。
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長身。
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黒の狩衣を現代風に崩したような服装。
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背には巨大な和弓。
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鋭い眼差し。
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そして。
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異様な自信。
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男は笑った。
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「さすがだな」
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ゆっくり歩いてくる。
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「弓道日本一は伊達じゃないらしい」
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澄華は静かに見つめる。
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「どちら様?」
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男が名乗る。
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「那須悠一」
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風が吹く。
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「那須家当主代理」
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「本当の日本一の弓使いの一族だ」
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澄華は微笑んだ。
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「それで?」
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首を傾げる。
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「みんなで必勝祈願?」
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後ろの男達を見る。
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那須悠一は笑った。
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「違う」
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声が低くなる。
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「徐福長老がお前の持つ八咫鏡を欲しがってる」
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初めて。
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澄華の瞳が細くなった。
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「徐福?」
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知らない名前。
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だが。
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嫌な響きだった。
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「生死は問わないそうだ」
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沈黙。
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満月の光が境内を照らす。
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そして。
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澄華は笑った。
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「そう」
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一歩下がる。
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次の瞬間。
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姿が消えた。
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森。
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月乃瀬神社の裏山。
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那須家の男達が駆ける。
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「追え!」
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「近い!」
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「逃がすな!」
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那須悠一は歩いていた。
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焦らない。
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何かがおかしい。
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そんな予感だけがあった。
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木々が揺れる。
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静寂。
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誰もいない。
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その時。
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月光が鋭く瞬いた。
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ヒュッ。
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一本。
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二本。
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三本。
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四本。
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五本。
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六本。
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七本。
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八本。
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矢が降る。
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天から。
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悲鳴。
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男達の右肩へ。
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正確に。
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一切の狂いなく。
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矢が突き刺さる。
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「がぁぁぁっ!!」
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「肩が!!」
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「腕が!!」
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武器が落ちる。
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戦意が消える。
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那須悠一だけが飛び退いた。
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矢が頬を掠める。
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赤い線。
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血が流れる。
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沈黙。
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そして。
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木の上。
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月乃瀬澄華が立っていた。
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白銀の瞳。
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月光を宿したような神秘的な輝き。
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八咫鏡。
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起動。
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「安心して」
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静かな声。
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「急所は外してるから」
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優しく微笑む。
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「一ヶ月もすれば弓も引けるわ」
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那須悠一は笑った。
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怒りではない。
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歓喜だった。
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「なるほど」
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「八人同時射抜きか」
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肩を震わせる。
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「面白い」
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澄華の表情が初めて変わる。
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この男。
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恐怖していない。
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那須悠一が背中へ手を伸ばす。
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巨大な和弓。
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常識外れの存在感。
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木々がざわめく。
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空気が軋む。
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「なら」
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ゆっくりと弓を持ち上げる。
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「こちらも本気でいこう」
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澄華の瞳が揺れた。
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その弓。
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ただの弓じゃない。
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那須悠一は笑う。
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「我が那須家に伝わる特級呪具」
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満月の光が差し込む。
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森が静まる。
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「与一の弓」
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世界が変わる。
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月乃瀬澄華は理解した。
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この戦いは。
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弓道じゃない。
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神話だ。
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白銀の瞳が輝く。
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与一の弓が唸る。
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そして。
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二人の天才が。
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森の奥で対峙する。
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