2. 女の子たちがピンチになっていた
僕がこの世界に転生して数時間が経とうとしていた。しばらく、自分の状態を確認していたのだ。
混乱しかけた脳内を整理する。
色々確認をしたことで分かったことがいくつかある。
まず、この世界にはスキルがあるらしい。僕は何やらよくわからないスキルをいっぱい持っていた。
ちなみに、さっき森の植生が頭に浮かんだのは、「常時鑑定」というスキルが発生しているからっぽい。
次に、この世界には魔力というものが存在するらしい。
こんなファンタジーな森に転生させられて魔法のようなスキルがある時点で察していたが、スキルを使用するにはこの魔力を消費する必要があるっぽい。
そして、僕の種族は「吸血鬼」というものらしい。
常時鑑定を自分にかけると、自分のステータスが脳内で表示された。
それを見てみると、「種族 吸血鬼」と書いてあったのだ。
これの何がまずいかと言うと、俺の主食がお米ではなく血になってしまった可能性があるのだ。これは普通にきつい。
最後に、これが一番大事。僕は、女の子の体に転生してしまったらしい。
決して主張が強いことはないが、形の整ったおっぱいもあるし間違い無いのだろう………。僕の息子も消えたし。
女神は僕を「転移」ではなく「転生」させると言っていた。
つまり、この体はもともとレッキとした女の子だったわけだ。
だから、僕は自分で制約をかけることにした。
「プライベートゾーンは極力見ない、触らない」
自分に言い聞かせるように、元の持ち主であった女の子に話しかけるように僕は制約を復唱する。
これは僕の理性を保つための鎖でもあった。僕は立派な男の子なんだから。
「………よし、じゃあ色々整理できたことだし、異世界ライフ堪能するよ〜」
僕は意気込み、このメルヘンな森から出る決意をする。
そして一歩踏み込んだその瞬間、「ここは私に任せて先に行きなさい!!!!」と誰かの叫び声が聞こえた。急に人の声が聞こえ、僕の肩が跳ねる。
声のした方向を向き、目を凝らすと人の姿が3人見えた。
状況を確認するために歩いて近づく。
暫く近づくと、剣を構えた女の子がでかい犬に立ち向かっている姿が目に映る。その女の子の後ろには、弓を片手に倒れている女の子と、倒れている子に顔を青ざめながら杖をかざしている女の子がいた。
この状況から察するに、あの女の子3人組とでかい犬が戦っているのか。
う〜ん………割り込んで助けに入るべき?
でもなぁ、スキルの使い方とかまだ理解しきれていないし、僕が今たくさん持っているスキルは名前が大仰なだけでしょぼいスキルかもしれない……。
そして何より、死にたく無いしなぁ………。
僕がどうしようか迷っていると、剣を構えていた女の子が俺に気付いたみたいで、声を張りあげる。
「そこの女の子!!??こんなところで何をしているんだ!?早く逃げろ!!!こいつはダイアウルフだ!!」
この犬ダイアウルフっていうんだ。
まあ、常時鑑定でわかってはいたけど。改めて詳しく、俺はこの犬のステータスを見る。
攻撃力50、と表示される。それ以外にもたくさんのステータスが表示されるが、今の俺にはこの情報以外あまり必要がない。
うん、俺の体力がは9999らしいから、多少攻撃をくらっても大丈夫ということか。
でも理論上は大丈夫というだけだから、実際は痛いししんどいんだろう。あんまり攻撃は受けたくない。
そんなことをのんびり考えていると、ダイアウルフとやらの矛先がいつの間にか僕に向かっていた。
ダイアウルフが僕に飛びかかろうとしてくる____
「逃げろ!!!」
「…………時間停止」
僕がそう唱えると、ダイアウルフの動きが止まる。………いや、ダイアウルフではなく世界が止まった。僕を除いて。
良かった〜〜〜使うスキル決めといて………!
飛びかかってきた時なんか本当に怖かったぁ…………!!
てかこの犬間近で見ると結構でかいし威圧感がすごいな。
僕はほっと息をつきながら試しにダイアウルフをちょんちょんと触ってみる。
………うん、反応なし。本当にこのスキルやばいな………。
後はこの犬にトドメを刺すだけだな。
うん、このスキルとか良さそうじゃないか?
「刺殺」
そう唱えた途端、ダイアウルフに目掛けて大量の刃のようなものが降りかかる。
思ったよりグロくて引いてしまう。安らかに眠れ………ナムアミダブツ………。
おそらく時間停止を解除した途端このワンちゃんは絶命するのだろう。ああ、怖すぎる。
僕は犬から大量に噴き出るであろう血がかからないように、剣を持った女の子の後ろに隠れておく。
「時間停止、解除」
ブシャーーー!!!!!と、ダイアウルフの肉片と血が飛び散る。
うわぁ、グロい〜〜〜!!!!
そして、僕の前に立っている女の子に血の雨が降りかかる。ごめんなさい。
我ながら残虐すぎたな、うん。このスキルは今後使わないようにしよう。
暫くすると、この世の終わりのような血の雨が止んだ。
ただ茫然としていた女の子たちがはっとし、いつの間にか隣にいる僕の姿にやっと気付いた。
「ひ、ひぃ…………こ、殺さないで…………」
かと思ったら、杖を持った女の子が急に命乞いをし始めた。いやいや、殺すわけないじゃん………。
「殺すわけないでしょ」
「へ、へ…………?」
女の子は鼻を啜りながら困惑していたが、殺されないことを理解した途端みるみる顔色が良くなった。
「あ、あの………あれは君がやったのか?」
すると今度は、剣を持った女の子が口をぽかんと開けたまま僕に問いかけてきた。
「うん………ちょっとやりすぎちゃったみたいだね………ごめん」
この子からほんの少しの警戒と恐怖が見えたので、こちらの誠意を見せて安心させる。
その誠意が伝わったのか、俺に敵意がないとわかるや否や彼女は剣を鞘にしまい、深々と僕に頭を下げてきた。
「ありがとう!君のおかげで私たちは一命を取り留めた…………いや………アーシェは死んでしまったが……………」
「アーシェ………うぅ…………」
アーシェというのは、多分ここに横たわっている弓を持った女の子のことだろう。
この世界では、こんなにも死が隣り合わせだというのか。僕はそっとアーシェと呼ばれる女の子の方を見る。
あれ?死んでないな……………。
鑑定では体力はまだ3残っているし、「備考」と書かれた欄には「瀕死」と書かれている。
そこのダイアウルフの遺体には「死亡」と書いてあるため、多分この子は死んでいない。
「アーシェって………この子?」
俺は弓を持った女の子のことを目線で伝える。
「ああ…………そうだ。彼女は非常に活発な子だった……………本当に…………」
「うぅ………………アーシェちゃん………」
やばい、このままでは二人とも泣き始めてしまう。
「…………まだ生きてるよね?」
「え?」
どうやら本当に気付いていないらしい。
仕方ない、僕はこのまま無視するような薄情な男ではないのだ。
「最高治癒」
アーシェと呼ばれる女の子に手をかざしながら、スキルを発動させる。
名前もそれっぽいし、多分回復するだろう。これで毒とかだったら、あとで女神にめっちゃ文句言っとこ。
僕の手からいかにもそれっぽい緑色の光が出る。二人は興味津々に、光を吸い込まれるように見ている。
やがてその光が収まると、アーシェは目を覚ました。
「…………あれ……………ウチ…………」
二人にとっては、アーシェが生き返ったように思ったのだろう。彼女らの溜まっていた涙が溢れ出した。
「アーシェ!!!!」
「あーしぇ〜〜〜〜!!!!」
そのまま3人は抱き合い、お互いの生を実感しながら喜び合っていたのだった。
うん、友情っていいね。僕は微笑みながら3人を見守るのだった。
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