3. お友達第一号
「あの………本当にありがとう…………なんてお礼を言ったら良いか……」
「ホンマにありがとう!あんたは命の恩人や!!」
「ありがとうございます〜〜!お礼に何でもします〜!」
3人は落ち着きを取り戻し、再び僕に深々と頭を下げた。
「ううん、気にしなくて大丈夫!」
…………他人に尽くせるって、他人に感謝されるってこんなにも嬉しいことなんだ。
僕は心から、助けて良かったと思った。
「一つ頼み事をしても良い?」
「なんだい!?」
「どんと来い!」
「はいぃ!!」
杖を持った女の子が、なんでもすると言ってくれているのでそれに甘えるとする。すると、3人は食い気味に顔を寄せてくる。みんな綺麗な顔してるなぁ………。
「最寄りの街に行きたいんだけど、案内してもらえるかな?」
夜になったら寝るところが必要だし、衣食住を揃えるためにはまず街に行く必要がある。
僕の「アドバイザー」というスキルにも、そう教えてもらった。
「もちろんやで!!ここからは1時間ちょっとや」
「私たちが暮らしているとこでもあるから、安心すると良い。歓迎するよ」
「で、でも………その前に………その服から着替えたほうが良いんじゃないですかねぇ………?」
杖を持った女の子から控え目にそう指摘される。
なんのことかと思い、つい困惑してしまう。
剣を持った女の子とアーシェは何かに気付いたらしく、僕を見ると顔を赤面して視線を逸らされてしまった。
ん?服って言ってたっけ…………
僕は自分の服を確認する。
……………うん、言っている意味がわかった。
「ほ、ほぼ布切れ一枚やんけ…………」
アーシェが赤面しながらそう言った。
「…………………見ないでっ」
僕は恥ずかしさのあまり居た堪れなくなり、茂みに隠れる。
そして、服を作れるスキルがないか大慌てで探すのだった。
◇◇◇
「…………気を悪くさせちゃってごめんね」
僕はそう謝る。
「衣類作成」というスキルがあったので、僕はそれを使いフード付きの大きめのパーカーと、ラフな長ズボンを作成して着た。
「貧相な体を見せちゃってごめんなさい…………」
僕は癖でつい、前世の感覚で謝罪してしまう。
「全然貧相などではなかったぞ!?む、む、むしろ綺麗だったぞ!!」
「そうやで!!もっと自信持ちいな!!」
「す、素晴らしい肉体でした………!!」
すると、3人は全力で僕の発言を否定する。「素晴らしい肉体」はよくわからないが、綺麗と言われて僕は照れる。
なんか、こうして褒められたり肯定されたりするのも何年振りなんだろう………。
「………………えへへ。ありがとうっ!それじゃあ街に行こっか」
「ぐふっ…………」
「ごはぁっ!?」
「我が人生に悔いなし……………」
僕は満面の笑みを湛えて彼女たちに先を促すと、彼女たちは口から血を流してどさりと倒れてしまった。
もしかしてまだ怪我治ってなかったのかな………。
◇◇◇
「ここが私たちの住む街、ミュンセンだ!」
彼女たちとお話ししながら歩くこと1時間弱。僕たちはミュンセンという街に着いた。鳥の鳴き声くらいしか聞こえなかった森とは違い、あたりは喧騒に包まれている。喧騒といっても、心地よい感じの。
大通りを挟むように建物がズラーっと並んでいる。どれも屋根が高く、北欧にありそうな感じの家だ。
時々、いわゆる獣人と言われるような人たちとすれ違いびっくりする。ここは異世界なんだなぁ、と改めて実感する。
「ここはね、近くが魔物の森だらけなせいで冒険者家業が盛んなの」
そう説明してくれるのは杖を持っていた、少し気弱そうな見た目の女の子・ヴィクトリアだ。
「うちらも冒険者やで。魔物を倒して金稼いでるんや」
関西弁のような口調が特徴的で、癖毛からも活発な印象を受ける。そんな彼女は、弓を持っていた女の子・アーシェだ。
「うむ。ちなみに私たちは、寝食を共にする仲でもあるぞ!」
彼女は剣を背負ったいた女の子・エヴァだ。長い髪は綺麗に下ろされていて、どこか高貴な雰囲気を纏う綺麗な女性だ。
「3人とも仲が良いんだね。羨ましいよ」
僕は三人に、自分の名前はケイであると伝えてある。三人の名前から察するに、椎名佳なんて名前の人はいないだろう。混乱を避けるためにも、まだこの世界にありそうなケイという名前を使ったのだ。
「まぁ、ウチら幼馴染ってやつやしなぁ」
「腐れ縁、的な………?」
「ケイはそう言った友達はいないのか?」
エヴァにそう聞かれ、僕は言い淀む。
この世界にはまだ友達なんているはずもないし、前世は小中と仲の良い友達はいなかった。
なんでも後から知ったのは、親の悪評が広まっていたせいで、クラスメイトの親たちから煙たがられていたらしい。
「僕は………いなかったかな」
「……………じゃあ、ウチがケイの友達第一号やな!」
「ぬ、じゃあ私は二号か?」
「あ、私は三号………?なんか下っ端ぽくて私にお似合いかも………」
三人とも優しすぎて涙が出そう。やさしい世界。
もしかして、よく自分の外見を確認してないからわからないけど、いい年してまだ友達すらいない可哀想な人って思われたのかな………?
ま、まぁ、こんなに優しい三人のことなんだからおそらく善意100%なのだろう。
「ありがとう……………友達ってこんな感じなんだ。なんかちょっと照れちゃうね………えへへ」
「ん゛っ……………ど、どういたしましてやで」
なんだろう?
三人が変な声を出したような気がしたけど、気のせいだっただろうか。
「…………つ、着いたぞ。ここが一番信用できる、質も良い宿だ。」
僕が疑問に思っていると、もう宿に着いていたらしい。
見た目は古き良き、という感じの宿場でとても安心感がある。
「食事は、ここの一階が食堂になってるから使うといい。ここのご飯は美味しいぞ?」
「私たちは冒険者ギルドか、このお家に来てもらえればいるよ……………何か困ったことがあった聞いてね?」
ヴィクトリアから簡易的な地図をもらった。赤丸がついているところが彼女たちのお家なのだろう。
「僕初対面なのに、お家の場所まで教えちゃって大丈夫なの?」
思っていたことがつい口から出てしまった。
「あはは、ウチの命の恩人やからな!こんくらい当たり前や」
「そうだぞ。むしろもっと我儘を言ってくれても構わないからな!」
「あなたならやましいことはしないでしょ?……………別にされても良いけど」
三人から全肯定してもらい、思わずたじろぐ。
この人たちといると、心が温まる。優しさで脳が溶けそうになっちゃう。
僕は再び心からの感謝を伝えて、宿屋に入ろうとしたがお金がないことを思い出しUターンする。
「あ、あの…………宿屋に泊まるのにお金っているよね………?」
「当たり前やろ…………あ、もしかしてお金ないんか?」
「む、それでは泊まれないではないか!」
「財布持ってれば……………私の馬鹿………」
どうやら宿屋に泊まるのにはお金がいるらしい。詰んだ。
どうしようか悩んでいると、アーシェが得意げに鼻を鳴らした。
「ふふん!ウチに任せい!ウチはいつでも財布を肌身離さず持っているタイプなんやで!」
「………アーシェ、それどういうタイプ?」
そう言いながら、アーシェは僕に金ピカの硬貨なようなものを一枚渡してきた。
「これで一週間は寝泊まり・食事できるで!」
「え…………!?あ、ありがとう…………」
500円くらいかと思っていたが、全然そんなことはなかった。
それだけの大金を僕になんの疑いもなく貸してくれるなんて………自分が不甲斐なく感じてきてしまった。
これだけの好意を無碍にするのも悪いので、僕は素直に受け取る。
「アーシェは準備が良いな!」
「せやろせやろ〜?」
このお金は絶対倍にして返さなきゃ。僕は恩返しを心の中で誓ったのだった。
三人と宿の前で別れた後、僕は受付に向かった。受付をしていたのは、年増の女の方だった。
「あの、ここに泊まりたいんですけど………空いてますか?」
「あら、こんな別嬪さんなんて珍しいわね。もちろん空いてるわよ」
別嬪さんって…………。褒められるのは嬉しいが、前世は男の子だったし反応し辛い。
「ルーク〜〜?」
「なんだよ母ちゃん」
受付の奥の扉から、ルークと呼ばれていた男の子が出てきた。年は16くらいだろうか?前世の僕と同じくらいの年齢だ。二人のやり取りから、おそらく受付の女の人の息子であることがわかる。
「この子を部屋まで案内してあげて?部屋は204号室だわ」
「わかった…………って…………こ、この人?」
「何怖気ついてるのよ、さっさと行きなさい」
「じゃ、じゃあついてきて」
僕は言われた通り、ルークについていく。受付の脇にあった階段を登り、廊下の突き当たりにある部屋に案内された。
「ここが君の部屋。後これ、この部屋の鍵。紛失用に二つ渡しとく」
「うん、ありがと」
僕は鍵を二つ受け取った。
「…………………あと、部屋から出る時とか、夜寝る時とかはちゃんと鍵かけて。君はその…………綺麗だから。変態とかが湧きそうだからな」
えぇ?変態に付き纏われるような容姿をしているってこと?ちょっと怖いな………。
「わかった。気をつけるね。あと、君もかっこいいよ?ルーク」
綺麗と褒められたので、僕もルークを褒める。
するとルークの顔がみるみる赤くなっていき、「そ、それじゃ」と言い残し去っていってしまった。何か気に触るようなことしちゃったのかな………。あとで謝らなきゃ。
僕は部屋の鍵を回し、中に入る。中には一人で暮らすには十分の広さがあった。
ふかふかのベッドに腰を掛け、ふぅと溜息をつく。
…………今日からはここで生活するんだ。前世はリビングの床で寝ていたから、ベッドなんて夢のまた夢だったのに。
ここから、僕の異世界ライフが始まる。そう考えるだけで、気分が高揚するのだった。
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