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16,545回処刑され続けた魔人ですが、別世界で気ままなグルメ旅を始めます  作者: 雉子鳥幸太郎


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9/12

調査開始

「なら、契約成立だ」


ゴルダが大きく息を吐いた。


「……助かる」

「では、川の向こうを調査してくる。それでいいな?」


「ああ、それで構わん」

「一つ確認だが……俺は冒険者登録をしていない。問題ないか?」


「いや、登録はしてもらう」

即答だった。


「手続きは本人確認用の魔紋を取るだけだ。スキルの開示も仕事の斡旋が不要なら必要ない」

「……強制依頼などは?」


「しない、ギルド法がある。たとえ王でも無理強いはできん」

「なら登録しよう」


最高のチーズとエールのためだ。

これくらいの労働なら前菜代わりにちょうどいいだろう。


ミアがどこからか持ってきた大きな魔石玉をテーブルに置く。


「こちらに手を」


俺は魔石玉に手を乗せた。

鈍い光を放つ。


「ありがとうございます、魔紋はOKですね。カードをお作りします。お名前は?」


ミアは小さなカードを取り出した。


「ウェイトリー・ブラムス」


「はい、ウェイトリー・ブラムス様っと……ご職業は?」

ペンで書きながら訊ねてくる。


「――魔術師だ」


    *  *  *


チスパと森へ向かう。

地図にあった橋のある場所へ向かう。


ゴブリンと交戦中の冒険者たちと鉢合わせた。

俺はチスパを離れた場所にくくり、防御結界を張った。


「ゴブリン程度じゃこの結界は壊せない。安心しろ」


チスパの首を撫で、俺は冒険者たちのもとへ近づく。


ゴブリンは約二十。対する冒険者は剣士の男、弓使いの男、魔術師の女のパーティーだった。


「押されてるな……」


金髪の剣士が叫ぶ。

「リズ! もっと離れろ!」


リズという魔術師が詠唱をしようとするが、ゴブリンに邪魔され、思うように魔術が発動できないでいる。


「で、でも……!」

『ギャッ⁉』

矢がリズの後ろから迫っていたゴブリンの頭部を貫く。


「きゃあっ⁉」

「はやく下がれ!」


叫んだのは一人木の上にいる弓使いだった。

背負った矢筒の矢は残りわずかだ。


「ハリー! お前もだ! リズを頼む!」


金髪の剣士の言葉に、ハリーは顔をゆがめる。

が、指示に従い木を降り始めた。


「……ファイア!」

リズがどうにか放った魔術は一瞬、大きな炎を見せたが、牽制程度にしかならなかった。


「そ、そんなぁ……」

杖を持つ手が震えている。


「リズ! こっちだ!」

ハリーがリズの手を引く。


「ヒューゴ! だ、だめ……ヒューゴぉっ……!」

ハリーはリズを無理やり引っ張っていく。


あの金髪、退く気がないな。


『ギャッギャッギャッ!』

『ギャギャ!』


ゴブリン達がヒューゴという剣士を囲み、嘲笑を始めた。

彼らは自分たちより弱い者をいたぶる習性がある。

このままなら、ヒューゴは長い時間をかけて嬲り殺しにされるだろう。


「クソッ! 小鬼(ゴブリン)どもが……ぶっ殺してやる!」

剣を構え、飛びかかってくる小鬼を斬り払っていく。


新人の割に、悪くない動きだ。

だが、そろそろ限界だろうな。


『グギァャッ!』

「あぐぁっ⁉」


小鬼の一体がヒューゴの足に噛みついた。

それを合図に小鬼たちが群がっていく。


「くっ……クソがぁっ!」


「ヒューゴ!」

悲痛な表情でリズを抱き留めるハリー。


「任せておけ」

俺は二人の横を通り、ヒューゴの元へ向かう。


「⁉」

「あ、あなたは……⁉」


「通りすがりの魔術師さ――」


俺は歩きながら、下げた両手の平を小鬼たちに向けた。


『――集団挑発(エリア・プロヴォーグ)


小鬼たちが一斉に俺を見た。


『『ギャギャギャ!!』』

『ギャーッギャッ!』


地面に棍棒を叩きつけたり、その場で飛び跳ねたりして、俺に怒りを向けた。

最初の一体が駆け出すと、残りもそれに続いた。


俺は左手を高く上げ、小鬼たちの足元を照らすように手の平を向ける。


『――泥沼(マッド・マイア)


『ギャッ⁉』

『ギャギャッ⁉』

魔術の沼に足を取られた小鬼たちが、必死に逃げ出そうとする。


「もう遅い」


小鬼たちに右手を伸ばし、手の平を上に返すと同時に、人さし指と中指を持ち上げるように立てた。


『――黒鉄の茨ソーン・オブ・フェラム!』


魔力の沼から漆黒の茨が発生し、次の瞬間、その棘が小鬼たちを貫く。


『ガギャッ⁉』

『グギィッ‼』


短い断末魔をあげ、小鬼たちが全滅した。


「な……あ、歩きながら……?」

リズが漏らすように言った。


呆然と俺を見上げるヒューゴの元へ向かう。


「生きてるか?」

「あ、あなたは……」


「怪我がひどいな。見せてみろ」


致命傷はないが、血を流しすぎている。

俺はヒューゴのマントを引き裂いて、腕と足を縛る。


「うぐっ……‼」

「痛むか? 我慢しろ」


止血はこれでいい。


「近くに……馬車が……」


「ヒューゴ!」

リズが駆け寄ってきた。


「リズ……」


ハリーが手を離した瞬間、リズが駆け出した。


「ヒューゴ! もう、バカッ!」


泣きながらヒューゴの顔を抱きしめている。

そういう関係なのだろう。


「本当に助かりました、ギルドの方でしょうか……?」

ハリーという弓使いが俺に言った。


「いや、偶然だよ。それよりも急いだ方がいいぞ」

ヒューゴの方を顎でしゃくる。


「は、はいっ! 私たちは『青い翼』というパーティーです。このお礼は必ず!」


勢いよく頭を下げると、ハリーはふたりを連れて街の方へ向かった。


俺は三人の背中を見送り、森へ向き直った。


――この場所で、あの数。


これは思ったより、時間がないかもな……。


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