笠地蔵。地蔵に藁帽子を被せたら、その夜に男の娘を運んできた。
二次創作になります。
山里の冬は厳しい。
雪は音を吸い込み、世界から人の気配を奪っていく。
昔話のように、男はただ思いつきでやった。
地蔵の列が、雪に埋もれかけていたのだ。
「寒そうだな……」
男は家にあった藁を編み、笠をいくつも作ると、地蔵たちにそっと被せていった。
「これで少しはマシだろ」
深い意味などなかった。ただの親切だった。
その夜だった。
風もないのに、戸がゆっくりと叩かれた。
――コン、コン。
「……誰だ?」
戸を開けると、そこには誰もいない。
いや、正確には“何かが立っていた”。
雪の中から、ふわりと浮かぶように現れたのは、一人の少年だった。
中性的で、どこか現実感の薄い美しさ。
白い息を吐きながら、じっと男を見上げている。
「……あの」
「はい?」
少年はぺこりと頭を下げた。
「地蔵です」
「は?」
男は戸を閉めかけた。
しかし少年は慌てず、もう一度丁寧に言う。
「正確には、笠をいただいた地蔵の“お礼の使い”です」
「情報量が多い」
少年はこほん、と咳払いをした。
そして、妙に真剣な顔で続ける。
「寒かったので助かりました。なので、恩返しに来ました」
「いや、恩返しって普通さ、米とか……」
「人をお届けします」
「物騒な言い方やめろ」
その瞬間、風もないのに、背後の雪がふわりと舞った。
そこから現れたように、もう一人――
同じように中性的で可愛らしい男の娘が、静かに立っていた。
「こちら、追加分です」
「追加分って何!?」
少年(地蔵)は真顔だった。
「冬は寂しいと聞きましたので」
「誰からそんな雑な情報仕入れたんだ」
男の娘たちは、特に慌てもせず、むしろ当然のように家の中へ入ろうとする。
「待て待て待て!」
男は慌てて止めた。
「意味が分からない!笠かぶせただけだぞ!?」
地蔵の少年は首を傾げる。
「人間界では、“優しさ”は繁殖するものだと習いました」
「どこの辞書だそれ」
外は相変わらずの吹雪だった。
だがその家の周りだけ、不思議と寒さが薄れていく。
まるで誰かが、そこだけ世界をやわらかくしているかのように。
男は深く息を吐いた。
「……とりあえず中入れ。寒いから」
その言葉を聞いた瞬間、男の娘たちが一斉に頷いた。
「では、正式に居住許可ですね」
「違う」
「婚姻準備に入ります」
「もっと違う!」
地蔵は満足そうに雪の中へ戻っていった。
去り際に、ぽつりと一言だけ残す。
「優しさは、ちゃんと返ってきます」
静かな夜だった。
そして翌朝、男の家にはなぜか三人分の湯気が立っていた。




