イエス・キリストが現代にタイムスリップして来た。とりあえずガンプラ作らせよう。小説を書いて下さい!
二次創作のフィクションです。
実在の人物・団体・事件・商品などには一切関係ありません。
東京のとある雑居ビルの一室。そこは小さな模型店の奥にある、店主の趣味部屋だった。
その日、店主・佐藤は奇妙な光景を目にすることになる。
「……ここは、どこだ?」
白いローブに身を包んだ青年が、静かに辺りを見渡していた。長い髪、穏やかな眼差し。まるで古い絵画から抜け出してきたような存在感。
「えっと……コスプレイベントの撮影ですか?」
佐藤が恐る恐る聞くと、青年は首を横に振った。
「私はナザレのイエスと呼ばれていた者です。気づけば、見知らぬ時代に立っていました」
沈黙。
「……はい?」
現代日本の模型店に、2,000年前の人物がタイムスリップしてきた。
しかもよりによって、この“ガンプラの聖地みたいな部屋”に。
最初は冗談だと思った佐藤だったが、イエスと名乗る青年はスマホも知らず、電気にも驚き、自動ドアに軽く感動していたので、さすがに演技ではないと理解する。
「とりあえず落ち着きましょう。えーと……模型、作れます?」
「“ものを形づくる”ことなら、学びたいと思います」
なぜか真剣だった。
佐藤は棚から一箱を取り出した。
「じゃあこれ。初心者向けのガンプラです」
箱を開けた瞬間、イエスは目を細めた。
「これは……小さな兵士の姿ですね」
「兵士というかロボットですけどね」
ランナーを見つめるイエスは、まるで奇跡の構造を観察する学者のようだった。
「すべての形には、意味があるのですね」
「いやまあ……プラモデルですからね」
ニッパーを手にしたイエスは、驚くほど慎重だった。
パチン。
初めての一手。
「切り離すだけなのに、少し心が静まりますね」
佐藤は思った。
(この人、なんか悟り開いてるな……)
説明書を読むイエスは、真剣そのものだった。
「この“STEP 3”とは、人生の段階のようですね」
「そんな深い意味はないです」
数時間後。
イエスの前には、組み上がりかけのガンプラがあった。
途中でパーツを逆につけかけたり、ポーズを「祈りの姿勢」にしようとしたりと紆余曲折はあったが、完成は近い。
「これは……ただの兵器ではありませんね」
イエスは静かに言った。
「形を持ちながらも、誰かの想いを宿している」
佐藤は思わず手を止めた。
「……いや、そこまで考えて作ってないです」
しかしイエスは微笑んだまま続ける。
「争いのために作られた形であっても、それを平和な時間の中で組み立てる者がいる。そこに救いがあるのかもしれません」
佐藤は少しだけ黙ったあと、ぼそっと言った。
「ガンプラ、そんな宗教的なものじゃないんですけどね……」
やがて完成した。
イエスの初めてのガンプラは、少しだけ関節が逆向きで、シールも曲がっていた。
でも、不思議と“優しい立ち姿”だった。
「名前をつけてもいいですか?」
「どうぞ」
少し考えたあと、イエスは言った。
「では、“平和の器”と呼びましょう」
「商品名から離れすぎてるなぁ……」
佐藤は頭をかいた。
その瞬間だった。
完成したガンプラが、ほんの一瞬だけ光った気がした。
気のせいかもしれない。
でもイエスは静かに頷いていた。
「この時代にも、人は形を通して何かを祈っているのですね」
佐藤は苦笑しながら言う。
「まあ……ガンプラって、そういうもんかもしれませんね」
その日から、店の奥には“謎の常連”が増えた。
模型を組み立てながら、なぜか人生相談まで受けるようになる店主と、
すべてを少しだけ深い意味に変換してしまう異世界の青年。
そして今日もまた、ランナーを切る音が静かに響いている。
パチン。
それは、小さな創造の音だった。




