ブッダが現代にタイムスリップして来た。とりあえずガンプラ作らせよう。小説を書いて下さい!
二次創作のフィクションです。
実在の人物・団体・事件・商品などには一切関係ありません。
気がつくと、彼は見知らぬ世界に立っていた。
石の床でもなく、蓮の上でもない。白く光る天井、規則正しく並ぶ棚、そして無数の箱。そこには奇妙な文字とともに、鋭く組み上がった人型の像が描かれている。
「……ここは、いかなる輪廻の境か」
静かに目を閉じた男は、呼吸を整えた。悟りを開いたはずの心でさえ、完全には把握できない“現代”という揺らぎ。
そのとき、背後から声がした。
「おじさん、その服コスプレ? すごいリアルなんだけど」
振り向けば、制服姿の少年が段ボールを抱えていた。
そして彼の腕の中には――“RX-78-2”と書かれた箱。
「それは……何だ」
「ガンプラ。ロボットのプラモデル。組み立てると、こういうのになるんだよ」
少年はスマホで完成写真を見せた。そこには、剣と盾を構えた白と青の機械の戦士が立っていた。
その瞬間だった。
彼の中に、妙な静寂が生まれた。
(執着なき形、しかし形あるもの。無常にして構造。……面白い)
「それを、組むことで“悟り”は得られるのか」
「え? いや、たぶん楽しいだけだと思うけど」
その言葉に、男は静かに頷いた。
「ならば、それでよい」
それから三時間後。
机の上には、ピンセットで丁寧に組み上げられたガンダムが座っていた。
ランナーは一切無駄なく分割され、接着もなく完璧に噛み合っている。説明書は一度も見返されていない。
少年は呆然としていた。
「え、初めてだよね……? なんでゲート処理まで完璧なの?」
「すべての部品は、もともと“ひとつ”である。それが分かれば、迷いはない」
「いや、物理的に分かれてるんだけど……」
完成したガンダムを見つめ、彼は静かに手を合わせた。
「形あるものは必ず壊れる。しかし、組み上げる行為そのものは消えぬ」
少年は小さくつぶやいた。
「なんか……深いような、ただプラモデル上手いだけのような……」
そのとき、完成したガンダムのカメラアイが夕日に照らされ、ほんの一瞬だけ輝いたように見えた。
男は微笑んだ。
「よき“遊び”であった」
そして次の瞬間、彼はもう一つの箱に手を伸ばしていた。
「次は……これを組むとしよう」
そこには“Ζガンダム”と書かれていた。
少年は気づいた。
この人はたぶん――この世界で一番、ガンプラに向いている存在だ、と。




