リングの貞子と呪怨の佳代子。可愛い二人の怨霊に取り憑かれてイチャラブする主人公の小説を書いて下さい!
二次創作になります。原作とはまったく関係ありません。
その部屋は、最初から“おかしい”という言葉では足りなかった。
テレビの中には黒い髪の少女――貞子。
古い一軒家の奥には白い影のような存在――佳代子。
本来なら、どちらも「関わってはいけない存在」のはずだった。
なのに。
「ねえ、それ何見てるの」
テレビの縁から、ひょいと顔を出す貞子。
青年はソファでスマホを見ながら、ため息混じりに答える。
「動画。怖い系じゃないやつ」
「……怖いの、見てるのに?」
「お前が言うな」
貞子はむっとしながらも、なぜか楽しそうにテレビから半分だけ出てくる。
出方がもはや慣れているのが一番怖い。
その瞬間。
廊下の奥から、冷たい空気が流れ込んだ。
「……また、話してる」
静かな声。
そこに立っていたのは伽椰子。
白い服、長い黒髪。
だがその目は、昔よりもずっと“人に近い”困惑を宿していた。
「増えてる……」
「増えてないって!」
貞子が即座に反論する。
青年はもう驚かない。
この家に住み始めてから、「驚く」という機能が少しずつ壊れていった。
◆
最初はただの事故だった。
呪われたビデオと、呪われた一軒家。
それぞれ別の“恐怖”だったはずの存在が、なぜか同じ空間に集まってしまった。
そしてそこにいたのが――この青年だった。
「ねえ」
ある夜、貞子が言った。
「君、ほんとに怖くないの?」
「眠いだけ」
即答。
「普通逃げるでしょ」
「逃げるの面倒」
その瞬間、佳代子が小さく吹き出した。
「……変な人」
それが、最初の変化だった。
◆
それからというもの。
・テレビから出てくる貞子が普通にお茶を飲む
・廊下の奥に佳代子が普通に座っている
・なぜか三人で夕飯を食べる
という、意味の分からない生活が始まった。
「ねえ」
ある日、佳代子がぽつりと言う。
「私たちってさ……ここにいていいの?」
貞子も少し黙る。
「……怖がらせるためにいるはずなのにね」
青年は箸を止めない。
「もう怖がられてないだろ」
「それは……そうだけど」
「なら別にいいじゃん」
あまりにも雑な結論。
だが、その雑さが妙に優しかった。
◆
雨の夜。
電気を消した部屋で、三人はそれぞれの場所にいた。
貞子はテレビの縁に座り、
佳代子は廊下の影に立ち、
青年は布団で寝転がっている。
「ねえ」
貞子が小さく言う。
「ここ、落ち着くね」
「……うん」
佳代子も静かに頷く。
長い沈黙のあと、貞子が少しだけ笑った。
「変だよね。私たち、怖がらせる存在なのに」
「でも今は、怖くない」
佳代子が続ける。
青年は目を閉じたまま言う。
「そりゃそうだろ。うるさくないし」
「ひどい」
「事実だろ」
小さな笑い声が重なる。
その夜。
二人の“怨霊”は気づく。
自分たちはもう、恐怖としてではなく――
「ここにいる誰か」として扱われていることに。
◆
そして、少しだけ未来。
貞子はテレビの中ではなく、ソファに座っている。
佳代子は台所で味噌汁を作っている(少し冷たい)。
青年はその間で普通に生活している。
「ねえ」
貞子が言う。
「君ってさ、ほんと変」
「よく言われる」
「でもさ」
少しだけ間を置いて、彼女は続ける。
「悪くないよ、この家」
廊下の奥から佳代子の声。
「……私も」
青年はテレビを消しながら言う。
「なら勝手に住め」
その一言に、二人は顔を見合わせる。
そして、同時に小さく笑った。
かつて“恐怖”と呼ばれた存在が、
今はただ、少しだけ不器用に人の隣にいる。
それは呪いでも怪異でもなく――
奇妙で、少しだけあたたかい、同居だった。




