主人公の方に雪女の見た目可愛い男の娘が居候しに来る展開でお願いします
別バージョン
それから三日後。
青年のアパートの前には、ありえない光景があった。
「……本当に来たのか」
息をつく青年の視線の先。
そこに立っていたのは、あの雪山で出会った“雪女”。
白銀の髪は相変わらず雪のように澄み、瞳は静かな冬の湖みたいに淡い青。
そして見た目はやっぱり、どう見ても“可愛い男の娘”だった。
ただし――今は私服姿で、しかも荷物を持っている。
「来たよ」
当然のように言う。
青年は数秒、黙った。
「……荷物、多くないか?」
「生活するんでしょ? 人間の家」
「いや、うちワンルームだけど」
「問題ないよ。雪、持ち込まないし」
そこじゃない。
そう言いたかったが、もう言っても無駄な気がした。
「……入るぞ」
鍵を開けると、彼は迷いなく中へ入っていく。
そして、部屋を一周見渡して一言。
「狭いね」
「悪かったな」
「でも落ち着く」
そう言ったのが意外で、青年は少しだけ拍子抜けした。
彼は窓際に立ち、外を眺める。
「ここ、雪ないんだね」
「そりゃ東京だしな」
「変な場所」
「それは同意する」
軽口のような会話。
だが次の瞬間、部屋の空気が少しだけ冷えた気がした。
青年が振り返ると、彼は真顔でこちらを見ていた。
「ねえ」
「なんだ」
「ほんとに住むの?」
「もう入ってるだろ」
「そういう意味じゃなくて」
少しだけ沈黙。
彼は一歩、青年に近づく。
「僕、妖怪だよ?」
「知ってる」
「普通、怖がるでしょ」
「前に助けられた時点で、怖がるタイミング逃した」
「……変な人間」
「よく言われる」
そこで、彼は小さくため息をついた。
そして、ぽつりと。
「じゃあさ」
「ん?」
「僕、ここにいていい理由って何?」
その問いは、少しだけ真剣だった。
雪山で会ったときの気まぐれな笑顔ではない。
青年は少し考えたあと、答えた。
「理由なんていらないだろ」
「は?」
「助けてもらったからとかじゃなくてさ。……一緒にいて嫌じゃない。それだけで十分だと思う」
雪女は固まった。
数秒、動かない。
そして――ふっと視線を逸らす。
「……人間って、そういう言い方するんだ」
「普通だと思うけど」
「普通じゃないよ」
小さく呟いて、彼は窓の外を見る。
だが、その耳がほんのり赤くなっているのを、青年は見逃さなかった。
「じゃあ決定でいいな」
「何が」
「居候」
「勝手に決めないでよ」
「もう来てる」
「……押しが強い」
そう言いながらも、彼は帰ろうとはしなかった。
代わりに、部屋の隅を見てぽつりと言う。
「寒くない?」
「暖房あるからな」
「それでも少し寒い」
「お前のせいじゃないかそれ」
「妖怪だからね」
さらっと言う。
そして少しだけ間を置いてから、続けた。
「でもここ、嫌いじゃないかも」
その言葉に、青年は少しだけ驚いた顔をした。
雪山のあの“氷の存在”が、今は狭い部屋の中で普通に立っている。
不思議な光景だった。
「……じゃあ、よろしく」
青年がそう言うと、彼は小さく頷いた。
「うん。よろしく」
そして、ふっと笑う。
雪山で見たあの笑顔よりも、少しだけ人間に近い笑顔だった。
――こうして。
妖怪・雪女(見た目は可愛い男の娘)は、
人間の部屋に居候することになった。
そしてこの日から、青年の部屋には「冬」が住み始めたのだった。




