続きを書いて下さい! 雪山の遭難で助けてもらった雪女の見た目可愛い男の娘が忘れられず、再び会いに来た主人公。一度は追い返すも。その後、主人公の元に居候する為に会いに来た雪女の見た目可愛い男の娘
山は、前と同じように静かだった。
けれど青年にとっては、もう“同じ山”ではなかった。
あの白い遭難の夜以来、雪を見るたびに思い出す存在がある。
――雪女。
いや、あの見た目はほとんど“少年”だった。
可愛らしく整った顔立ち、雪のように透き通る髪。
冷たいはずの存在なのに、なぜか記憶の中では妙に温度があった。
「……いるはず、ないんだよな」
そう呟きながらも、青年はまた山に来ていた。
理由は単純だ。
“会えないと納得できない”からだ。
登山口から少し入ったあたり。前に遭難しかけた地点に近づくと、空気が変わる。
音が薄くなり、雪の粒がゆっくりと舞い始める。
「やっぱり……いるのか」
そう思った瞬間だった。
「来ると思った」
背後から、あの声。
振り返ると、そこにいた。
白銀の髪。無機質なほど整った顔立ち。
だが、どこか拗ねたような表情をしている。
「……また遭難しに来たの?」
「違う。会いに来た」
即答すると、雪女は一瞬だけ目を瞬かせた。
「……物好きだね、人間って」
「君が助けてくれたからだ」
その言葉に、彼はほんの少し視線を逸らした。
「助けたのは気まぐれ」
「それでも助かったのは事実だ」
沈黙。
雪が落ちる音だけが、やけに大きく感じられる。
やがて雪女は小さく息を吐いた。
「で、何しに来たの。感謝ならもう聞いた」
「もう一回会いたかっただけだ」
「それだけ?」
「それだけ」
あまりに迷いのない返答に、彼は少しだけ困ったように眉を寄せた。
「……人間って、もっと理由つけるものじゃないの?」
「理由が必要か?」
「普通はね」
「じゃあ理由を作る。君が気になるからだ」
その言葉に、雪女は完全に固まった。
風が止む。
雪が一瞬だけ落ちるのを忘れたように、静止する。
「……は?」
「気になる。助けられたときからずっと」
「それ、危ない人間の発想だよ」
「妖怪に言われたくはない」
間髪入れず返されて、雪女は初めて小さく吹き出した。
「はは……言うね」
だが次の瞬間、表情が戻る。
「帰りなよ。ここは人間が長くいる場所じゃない」
「なら、短くならいいのか?」
「そういう問題じゃない」
「じゃあ何の問題だ」
問われると、彼は言葉に詰まった。
その隙を見逃さず、雪女は背を向ける。
「もう来ないで。次は助けないかもしれない」
それだけ言って、雪の中へ消えようとする。
だが。
「住めばいいのか?」
その一言で、彼の足が止まった。
「……は?」
振り返る。
青年は真顔だった。
「君の近くにいればいいんだろ。なら住めばいい」
「いやいやいやいや」
珍しく語尾が乱れる。
「意味わかって言ってる? ここ山だよ? 人間の生活無理だよ?」
「工事現場のバイトしてた。寒さには慣れてる」
「そういう話じゃない」
「じゃあ何だ」
再び沈黙。
今度は雪女の方が言葉を失っていた。
そして、ため息。
「……バカなの?」
「よく言われる」
即答。
彼は額を押さえた。
「妖怪に居候しようとする人間、初めて見た」
「なら記録更新だな」
「嬉しくない記録だよそれ」
しばらくの間、雪が静かに降り続いた。
やがて彼は、小さく視線を逸らしたまま言う。
「……本当に来るの?」
「行く」
「断っても?」
「断られても来る」
「ストーカー気質じゃん」
「助けられた借りを返したいだけだ」
「借りって……」
そこで、雪女は少しだけ黙った。
そして、観念したように肩を落とす。
「……じゃあ一つだけ条件」
「なんだ」
「寒いときに文句言わないこと」
「言わない」
「あと、勝手に山で死なないこと」
「努力する」
「努力じゃなくて絶対」
「わかった」
そこまで聞いて、彼はようやく小さく息を吐いた。
「……ほんとに来るのか」
「来る」
「……変な人間」
「よく言われる」
そして雪女は、少しだけ困ったように笑った。
その笑顔は、初めて会ったときよりも、ほんの少しだけ柔らかかった。
「じゃあ……来れば?」
雪の中に消えかけながら、彼はそう言った。
「でも後悔しても知らないからね」
青年はその背を見送りながら、静かに頷く。
――妖怪は気まぐれだ。
そして人間は、もっと気まぐれだ。
こうして、雪山に住む“雪女(見た目可愛い男の娘)”と、
やたら真っ直ぐな人間の奇妙な同居が始まろうとしていた。




