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妖怪は実は存在する。雪山で遭難した主人公が妖怪雪女の見た目可愛い男の娘に助けられる小説を書いて下さい!

雪は、音を消す。

風さえも息を潜めるような白い世界で、青年は膝から崩れ落ちた。

視界は白、方向感覚はとうに失われ、手足の感覚も薄い。

「……まずいな」

口にした言葉はすぐに凍り、空気に溶けて消えた。

登山は無謀ではなかったはずだ。天気予報も確認した。装備も整えた。

それでも山は、人間の計算を簡単に裏切る。

――ああ、これが“遭難”か。

意識が沈みかけた、そのときだった。

風が止んだ。

正確には、風の向きが変わったわけでも、気温が上がったわけでもない。

ただ、世界の“冷たさ”だけがふっと薄くなる。

「こんなところで寝たら、死ぬよ」

声がした。

女の子のように高く、けれどどこか中性的で、雪のように澄んだ声。

青年は目を開いた。

そこにいたのは――人間ではなかった。

白銀の髪。雪の結晶を思わせる淡い光を宿した瞳。

肌は雪よりも白く、それでいて生きている温度を持っている。

そして何よりも、その姿はあまりに“可愛らしい少年”だった。

「……だれ、だ」

「雪女、って呼ばれることが多いかな」

さらりと言いながら、彼――その存在はしゃがみ込む。

雪の上に足跡はほとんど残らない。

「でも、正確にはちょっと違う。妖怪って、人間が勝手に名前つけただけだし」

青年は混乱したまま、息を飲む。

「妖怪……? 本当に……いるのか」

「いるよ。ここに」

軽い冗談のように言って、その少年の“雪女”は小さく笑った。

その笑顔は、氷のように冷たいはずなのに、不思議と優しかった。

「動ける? 肩貸すよ」

「……助ける、のか」

「このまま放置したら山の評判が悪くなるし」

意味のわからない理由だったが、その手は確かに差し出されていた。

青年がその手を取ると、驚くほど冷たいのに、なぜか凍るような恐怖はなかった。

むしろ、体の奥に残っていた震えが、少しずつ落ち着いていく。

「……君は、人間を助けるのか」

「気分次第かな」

雪女は歩き出す。雪の上を滑るように、音もなく。

「ただ、今日はたまたま気分が良かった。それだけ」

「そんな理由で……」

「妖怪って、だいたいそんなものだよ」

振り返った横顔は、やはりあまりに美しく、そしてどこか寂しげだった。

しばらく無言のまま歩いた後、青年はぽつりと尋ねた。

「君は……ずっとここにいるのか」

「うん。昔から」

「退屈じゃないのか」

その問いに、雪女は少しだけ目を細めた。

「退屈、か……」

風が再び吹き始める。けれど今度の風は、さっきまでのような刃の冷たさではない。

「人間ってさ、面白いよ。すぐ迷うし、すぐ諦めるし……それでも山に来る」

「……それは、褒めてるのか?」

「どうだろうね」

ふっと笑う。

その笑顔は、雪の奥にひとつだけ灯った小さな光のようだった。

やがて、視界の先に薄く人里の灯りが見え始める。

「ここまで来れば大丈夫」

雪女は立ち止まり、肩からそっと手を離した。

冷気が一気に戻る。だが不思議と、もう恐ろしくはなかった。

「助かった……ありがとう」

青年が頭を下げると、雪女は少しだけ驚いたように瞬きをした。

「お礼なんて珍しい」

「当たり前だろ」

その言葉に、ほんの少しだけ、彼は嬉しそうに目を細めた。

「じゃあさ」

別れ際、雪女はぽつりと言った。

「また迷ったら、呼んでいいよ。気が向けば、また助ける」

「……妖怪を呼ぶ方法なんて知らないぞ」

「雪山で迷えば、また会える」

それだけ言うと、彼の姿は風に溶けるように薄れていった。

残ったのは、静かな雪と、わずかに温度を取り戻した世界だけ。

青年はしばらくそこに立ち尽くし、それからゆっくりと下山を始めた。

――妖怪は、存在する。

そしてそれは、人間の知らないところで、気まぐれに手を差し伸べることもあるらしい。

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