初めて戦闘機に乗り、ライバルの可愛い男の娘と戦闘する主人公の男の娘の小説を書いて下さい!
滑走路の向こう側は、朝焼けに染まっていた。
主人公――リオはヘルメットの顎紐を強く締め直し、コックピットの中で深く息を吸った。初めて乗る戦闘機の振動が、骨の奥まで伝わってくる。
「本当に……俺がこれに乗るのか」
訓練校では優秀だった。だが、それはシミュレーターの中の話だ。実機の戦闘機は、ただの機械ではない。意思を持った獣のように、静かに彼を試していた。
通信機が弾ける。
『リオ、初出撃だ。落ち着いていけ』
教官の声は短い。余計な言葉はない。それが逆に、現実を突きつけてきた。
空へ。
リオの機体は滑走路を離れ、急速に高度を上げた。雲を突き抜けた瞬間、世界が一気に広がる。青の海のような空。そこに、もう一機の影があった。
敵機。
だが、通信が割り込む。
『……やっと来たんだね、リオ』
その声に、リオの背筋が凍った。
忘れるはずがない。
訓練校で常にトップを争い、いつも彼の一歩先を飛んでいた存在。
ライバル――カナタ。
そして彼は、可愛いと評される見た目とは裏腹に、冷静すぎるほどの戦闘センスを持つ“男の娘”だった。
『まさか本気で君と空で戦う日が来るなんてね』
カナタの声は穏やかで、まるで雑談の延長のようだった。
だが次の瞬間、空気が変わる。
ロックオン警報。
「っ……!」
リオは操縦桿を強く引いた。機体が悲鳴のように軌道を変える。ミサイルが白い軌跡を残して空を裂く。
初撃。
容赦がない。
「くそっ、カナタ……!」
彼は歯を食いしばりながら反撃に移る。旋回。急降下。加速。訓練で叩き込まれた動作を、体が勝手に繋いでいく。
だが、追いつけない。
カナタの機体は、まるで空そのものに溶けているようだった。どこにいるのか、次の瞬間どこへ行くのか、予測ができない。
『遅いよ、リオ』
背後。
リオは直感だけで操縦桿を倒した。銃撃が機体の横をかすめる。金属が悲鳴を上げる音が、耳の奥に刺さった。
「っ……なんでだよ……!」
悔しさが喉を焼く。
訓練では互角だったはずだ。むしろ、今日は自分の方が調子がいいはずだった。
なのに――。
『空はね、速いだけじゃ勝てないんだよ』
カナタの声が、やけに近い。
リオは視線を走らせた。
そこにいた。
雲の切れ間、太陽を背にして浮かぶ機体。シルエットだけで、美しいとすら思える軌道。
「見つけた……!」
リオは機体を持ち上げ、距離を詰める。射線に入る。引き金に指をかける。
勝てる。
そう思った瞬間――。
カナタの機体が消えた。
いや、違う。
“落ちたように見せて上昇した”。
視界の死角。完全な誘導。
「しまっ――」
警報。
ロックオン。
今度は逃げられない距離。
通信が静かに入る。
『リオ』
一瞬の沈黙。
『次は、ちゃんと追いついてきてね』
ミサイル発射。
白い光が空を裂き、リオの視界が揺れる。
爆音。
だが、その直前。
リオは引き金を引いていた。
相打ち。
空の中で、二つの影がすれ違うように離れていく。
通信が途切れかける中、カナタの小さな笑い声だけが残った。
『……やっぱり、君は面白いね』
リオは乱れた呼吸のまま、空を見上げた。
負けたのか、勝ったのか、それすら分からない。
ただ一つだけ分かる。
この空には、まだ続きがある。
そして次は――必ず追いつく。
戦闘機は再び旋回し、二つの影は青い空の中へ消えていった。




