宇宙人と地球人のラブコメ小説を書いて下さい!ただし宇宙人は可愛い男の娘で!
東京の夜空は、どこかいつもより澄んで見えた。
その理由を、人類はまだ知らない。
――その夜、地球に落ちてきたのはUFOでもなければ、侵略兵器でもなかった。
ただ一人の“宇宙人”。
しかも、ひどく可愛い男の娘だった。
「……ここが、地球、ですか」
草むらの中からゆっくりと立ち上がった彼は、銀色の髪を揺らしながら周囲を見回した。瞳は星屑みたいに淡く光り、制服のような謎のスーツは少しほつれている。
名前はリュート。銀河連邦の観測員であり、見た目はどう見ても美少女にしか見えない宇宙人だ。
そして、最初に彼を見つけたのが――
「えっ、ええええ!? なにこれ、コスプレ!? いや本物!? いやでも可愛すぎない!?」
平凡な高校生・高橋悠斗だった。
「助けてください。通信装置が故障して、帰還できません」
「いやさらっと言うけど状況重すぎない!? ていうか宇宙人!? 本物の!?」
「はい。宇宙人です」
即答だった。
疑う余地がなさすぎて、逆に悠斗のほうが現実を受け入れるしかなかった。
こうして始まったのが、奇妙な同居生活だった。
リュートは地球の文化を学ぶために“人間の生活”を観察すると言い、なぜか悠斗の家に居候することになった。
ただし問題がある。
・見た目が可愛すぎて女子にしか見えない
・感情表現が素直すぎて距離感が近い
・地球の常識を知らなすぎる
「ユウト、人間はなぜ“好き”という感情を隠すのですか?」
「いやそれいきなり聞く!?!」
「私はユウトのことを、好きだと判断しています」
「やめて心臓に悪い!」
朝。
「おはようございます、ユウト」
「近い近い近い!」
夜。
「一緒に寝てもいいですか?」
「ダメに決まってるだろ!!」
……なのに。
気づけば悠斗は、彼のことを拒否できなくなっていた。
ある日、学校で事件が起きた。
「ねえあの子誰? 新しい転校生?」
「え、めっちゃ可愛くない?」
男子も女子も一斉にリュートに注目する。
しかしリュートは首を傾げて言った。
「なぜ皆、私を見ているのですか?」
「いやそれは見られるだろ!!」
悠斗は思わずリュートの腕を引いてしまう。
その瞬間――
「……ユウト?」
リュートの瞳が、少しだけ揺れた。
放課後の屋上。
風が静かに吹く。
「ユウトは、私が地球にいることを迷惑だと思っていますか?」
「そんなことない」
即答していた。
自分でも驚くほど、迷いがなかった。
リュートは少しだけ笑った。
「では、私はここにいてもいいのですね」
「……ああ」
沈黙。
夕焼けが二人を橙色に染めていく。
「ユウト」
「ん?」
「私はあなたを観測対象として選びました」
「それ観測って言い方やめてくれない?」
「でも今は違います」
リュートは一歩近づいた。
「今の私は、“あなたと一緒にいたい”と思っています」
風が止まった気がした。
「地球の言葉で言うと、それは“好き”ですか?」
「……多分、そういうやつだな」
「なら私は、ユウトが好きです」
あまりにもまっすぐで。
あまりにも宇宙規模で。
あまりにも逃げ場がなかった。
「帰る方法、探すんだろ?」
「はい」
「じゃあ、それまでだな」
「はい」
間。
リュートは小さく付け加えた。
「……帰りたくなくなるかもしれません」
「それは俺のほうが困る」
「なぜですか?」
「だって俺が寂しくなるから」
その言葉に、リュートは初めて少しだけ頬を赤くした。
「ユウトは、ずるいです」
「どっちがだよ」
こうして、地球人と宇宙人の奇妙な同居は続く。
恋なのか、観測なのか、それともまだ名前のない何かなのか。
ただひとつ確かなのは――
この宇宙で一番ややこしい感情が、東京の片隅で静かに育ち始めているということだった。




