特撮ヒーローの敵幹部は怪人が可愛い男の娘ならヒーロー達に許されるかもと思い。可愛い男の娘怪人を作る小説を書いて下さい!(1)
特撮ヒーロー番組の世界には、常に“悪の組織”が存在する。
だがその組織「ダークネビュラ」の幹部会議は、最近ひとつの深刻な問題に直面していた。
「……また怪人が倒された」 「今月で十二体目です」 「ヒーロー側、容赦なさすぎでは?」
重たい沈黙の中、幹部の一人がぽつりと呟いた。
「やはり、見た目だ」
「見た目?」
「そうだ。ウチの怪人は怖すぎる。ゴツすぎる。触手だらけで叫び声も怖い。そりゃ倒される」
その言葉に、会議室がざわつく。
そして、誰かが冗談半分で言った。
「……じゃあ、可愛ければいいのでは?」
その一言が、すべての始まりだった。
数日後、ダークネビュラの地下研究所。
白衣の科学者たちが集まり、巨大な培養ポッドの前で設計図を囲んでいた。
「新怪人案、第七稿……“愛され系怪人プロジェクト”」
モニターには、信じがたいビジュアルが映っている。
ふわふわの銀髪。大きな瞳。中性的で整った顔立ち。華奢な体型。
「これが……怪人か?」
「一応、戦闘能力は維持しています。再生能力と幻惑能力を付与済みです」
幹部は腕を組み、真剣に頷いた。
「よし、方向性はこれだ。ヒーローは“可愛い存在には攻撃しづらい”心理がある」
「倫理的にどうなんでしょうか」 「悪の組織に倫理を求めるな」
こうして生まれた怪人の名は「キュアリス」。
見た目はどう見ても、街を歩けばスカウトされそうなほどの美少年……いや、可愛い男の娘だった。
だがその正体は、幻惑と記憶攪乱を操る危険な怪人である。
初出撃の日。
街に現れたキュアリスは、破壊活動の代わりに、なぜか静かに立っていた。
「……えっと、戦うの?」
通りすがりのヒーロー・レッドブレイバーが困惑する。
キュアリスは小さく首を傾げる。
「僕、怖くないよ?」
その瞬間、戦闘員たちがざわついた。
「えっ……可愛い」 「いや、倒す対象だぞ!?」 「でも泣かれたら無理じゃない?」
ヒーロー側も混乱していた。
レッドブレイバーは剣を構えたまま固まる。
「いや、怪人だろ……倒すのが仕事で……でも……なんか罪悪感が……」
キュアリスはそっと微笑んだ。
その笑顔は、戦意を削るには十分すぎた。
結果、その日の戦闘は「双方の精神的混乱」により中断された。
ダークネビュラ本部では歓声が上がる。
「成功だ!!」 「ヒーローが攻撃できていない!!」 「これは新時代の怪人だ!!」
だが一方で、問題も発生していた。
キュアリス本人が、戦闘にあまり乗り気ではないのだ。
「僕、壊すのとか……あんまり好きじゃないんだけど」
「いや君は怪人だぞ!?」
数日後。
キュアリスは再び街に出現したが、今度は花壇の前でしゃがみ込んでいた。
「この花、踏まれたらかわいそうだなぁ……」
通りかかったヒーローたちは、完全に動きを止めていた。
「敵なのか……?」 「いや、たぶん違う気がする……」 「むしろ保護対象では……?」
その時、遠くでダークネビュラ幹部が叫ぶ。
「戦え!!可愛いだけじゃ世界は征服できん!!」
キュアリスは振り返り、少し困ったように笑った。
「でも、誰かを怖がらせるのは嫌だよ」
その言葉は、敵味方の境界線を一瞬だけ曖昧にした。
そして物語は奇妙な方向へ進み始める。
ヒーローは「倒すべき存在なのか迷う敵」を前に戸惑い、 悪の組織は「戦わせたいのに戦わない怪人」に頭を抱え、 街の人々は「なんか癒されるから許す」という空気になりつつあった。
そしてキュアリスは今日もただ、静かに呟く。
「僕、みんなが仲良くしてる世界のほうが好きなんだけどな……」
それが、悪の組織最大の誤算だった。
“可愛さは兵器になる”と思った彼らは、まだ知らない。
可愛すぎる存在は、戦争そのものを成立させなくすることがあるのだと。




