表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/98

100人の男の娘冒険者リョカの後日談を書いて下さい!

泉のダンジョン事件から三日後。

ギルドの報告書は、まだ完成していなかった。

「“冒険者リョカ百名発生事案”って何だよ……」

受付嬢は頭を抱えたまま、机に突っ伏した。

だが問題は報告書ではない。

――その“百人”が、まだ減っていないことだった。

街の外れの臨時拠点。

そこには、百人のリョカがいた。

銀髪、同じ顔、同じ体格。

ただし、よく見ると微妙に違う。

真面目に整列しているリョカ。

壁にもたれて昼寝しているリョカ。

地図を百枚並べて議論しているリョカ。

そして、なぜか料理を極め始めたリョカ。

「……これ、もう冒険者パーティじゃなくて組織だな」

本体(と全員が思っている個体)がぽつりと言った。

すると即座に別のリョカが返す。

「いや、全員本体だろ」

「そこは譲れない」

「譲れ」

「譲らん」

即座に百方向から同じ議論が始まり、拠点は軽く騒がしくなる。

問題は戦力だった。

百人いる。

つまり、単純計算で百倍強い。

実際、ギルドが依頼を出すと――

・討伐依頼 → 3分で終了 ・採取依頼 → 一斉分業で市場崩壊 ・護衛依頼 → 護衛対象より護衛が多い

「やりすぎだろ……」

ギルド長は頭を抱えた。

だがリョカたちは悪気がない。

むしろ真剣だ。

「効率を最大化した結果こうなった」

「泉の影響で最適化されたから仕方ない」

「つまり俺たちは合理的存在」

「いや怖いわ」

そんなある日。

百人のリョカが、同時に黙った。

珍しい現象だった。

全員の視線が、一点に集まる。

「……なあ」

誰かが言う。

「このままだと、街が俺たち基準で設計されるぞ」

「もうされてる」

「まずいな」

「戻る方法、探すか」

珍しく意見が一致した。

百人のリョカが、一斉に頷く。

その夜。

百人は泉ダンジョンの記録を再調査していた。

地図。

魔法式。

願いの解釈ログ。

そして共通して見つかった一行。

――「分岐は“願いの再統合”で収束する可能性あり」

「つまり……まとめて願えばいいのか?」

「いや、前それで100人になったんだが?」

「そこが問題なんだよな」

百人が同時に頭を抱える。

そして数日後。

再び泉の前。

百人のリョカが並ぶ光景は、もはや神話のようだった。

「願いは一つ」

百人が同時に言う。

「“元の一人に戻れ”」

泉が静かに揺れる。

沈黙。

長い沈黙。

そして――

水面が、ゆっくりと一つの波紋を描いた。

光が満ちる。

視界が白に染まる。

次に目を開けたとき。

そこにいたのは――

一人のリョカだった。

静かな風。

普通の手。

普通の心臓の鼓動。

「……戻った、か」

少しだけ間を置いて。

彼は空を見上げる。

「いや、ちょっと静かすぎて逆に落ち着かないな……」

その背後で、遠くの泉が小さく光った気がした。

――そしてどこかで、また誰かが小さく笑った気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ