100人の男の娘冒険者リョカの後日談を書いて下さい!
泉のダンジョン事件から三日後。
ギルドの報告書は、まだ完成していなかった。
「“冒険者リョカ百名発生事案”って何だよ……」
受付嬢は頭を抱えたまま、机に突っ伏した。
だが問題は報告書ではない。
――その“百人”が、まだ減っていないことだった。
◆
街の外れの臨時拠点。
そこには、百人のリョカがいた。
銀髪、同じ顔、同じ体格。
ただし、よく見ると微妙に違う。
真面目に整列しているリョカ。
壁にもたれて昼寝しているリョカ。
地図を百枚並べて議論しているリョカ。
そして、なぜか料理を極め始めたリョカ。
「……これ、もう冒険者パーティじゃなくて組織だな」
本体(と全員が思っている個体)がぽつりと言った。
すると即座に別のリョカが返す。
「いや、全員本体だろ」
「そこは譲れない」
「譲れ」
「譲らん」
即座に百方向から同じ議論が始まり、拠点は軽く騒がしくなる。
◆
問題は戦力だった。
百人いる。
つまり、単純計算で百倍強い。
実際、ギルドが依頼を出すと――
・討伐依頼 → 3分で終了 ・採取依頼 → 一斉分業で市場崩壊 ・護衛依頼 → 護衛対象より護衛が多い
「やりすぎだろ……」
ギルド長は頭を抱えた。
だがリョカたちは悪気がない。
むしろ真剣だ。
「効率を最大化した結果こうなった」
「泉の影響で最適化されたから仕方ない」
「つまり俺たちは合理的存在」
「いや怖いわ」
◆
そんなある日。
百人のリョカが、同時に黙った。
珍しい現象だった。
全員の視線が、一点に集まる。
「……なあ」
誰かが言う。
「このままだと、街が俺たち基準で設計されるぞ」
「もうされてる」
「まずいな」
「戻る方法、探すか」
珍しく意見が一致した。
百人のリョカが、一斉に頷く。
◆
その夜。
百人は泉ダンジョンの記録を再調査していた。
地図。
魔法式。
願いの解釈ログ。
そして共通して見つかった一行。
――「分岐は“願いの再統合”で収束する可能性あり」
「つまり……まとめて願えばいいのか?」
「いや、前それで100人になったんだが?」
「そこが問題なんだよな」
百人が同時に頭を抱える。
◆
そして数日後。
再び泉の前。
百人のリョカが並ぶ光景は、もはや神話のようだった。
「願いは一つ」
百人が同時に言う。
「“元の一人に戻れ”」
泉が静かに揺れる。
沈黙。
長い沈黙。
そして――
水面が、ゆっくりと一つの波紋を描いた。
光が満ちる。
視界が白に染まる。
◆
次に目を開けたとき。
そこにいたのは――
一人のリョカだった。
静かな風。
普通の手。
普通の心臓の鼓動。
「……戻った、か」
少しだけ間を置いて。
彼は空を見上げる。
「いや、ちょっと静かすぎて逆に落ち着かないな……」
その背後で、遠くの泉が小さく光った気がした。
――そしてどこかで、また誰かが小さく笑った気がした。




