表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/98

20人に増えた男の娘冒険者リュカ。何でも願いを叶えると言われる泉のダンジョンで最終的に100人に増えてしまう小説を書いて下さい!

泉のダンジョンは、もはや“部屋”ではなく“現象”だった。

青い光が呼吸するように揺れ、床は水面のように微かに波打っている。

そしてそこに立つのは――二十人のリュカ。

銀髪の男の娘冒険者が二十人並ぶ光景は、最初の頃の違和感すら通り越して、奇妙な秩序を持っていた。

「ここまで来ると、もう軍隊だな」

「いや、軍隊よりタチが悪い。全員“俺”だからな」

「しかも微妙に性格違うし」

軽口を叩きつつも、視線は泉の中心に固定されている。

そこには、静かに満ちた“願いの泉”。

何でも願いを叶えると言われる、ダンジョンの核。

だがここまでの経験で、リュカたちは理解していた。

――この泉は“願いをそのまま叶えない”。

“解釈して増幅する”。

「次、間違えたら終わりだぞ」

「いや、もうすでに十分間違ってる気がするけどね」

そのときだった。

泉が、音もなく脈動した。

『願いを、どうぞ』

空間全体に響く声。

二十人のリュカが、一斉に息を止める。

「来るぞ……」

「今度は慎重に……」

「絶対に“増える系”は避ける」

だが、その“慎重”という概念すら、この泉には意味がなかった。

一人のリュカが、ぽつりと言った。

「……戻りたい」

その一言。

それが、全ての始まりだった。

泉が反応する。

水面が一瞬止まり――

そして、爆ぜた。

「ちょ、待てそれは――!」

遅い。

光が空間を満たす。

そして世界が“分解”される。

二十人のリュカの身体が、再び裂ける。

しかし今回は“単純な倍化”ではない。

願いがこう解釈されたのだ。

――「元に戻りたい」=「元の“最適な状態”を複数生成する」

「おい、これやばいぞ!」

「増えてる!しかも速い!」

「数えてる暇ない!」

視界が埋まる。

銀髪のリュカが、空間のあらゆる場所に“生まれていく”。

二十。

三十。

四十。

五十。

そして――

「……八十!」

「まだ止まらない!」

「泉、学習してる!“最適な戻り方”を試行してる!」

そして最後の脈動。

泉が、満足したように静かに光った。

「……百」

誰かが呟く。

その瞬間、全てが確定した。

二十人だったリュカは――百人になっていた。

「…………」

沈黙。

百人のリュカが、同時に沈黙している。

その光景はもはや異様を通り越して、“一つの都市”だった。

百の視線が交差する。

百の思考が同時に走る。

そして、百の結論が同時に出る。

「……これ、完全に詰んでない?」

「いや、詰んではない。むしろ情報処理能力は最強だ」

「でも精神がうるさい」

「全員俺だからな……」

泉は静かに揺れている。

まるで満足したかのように。

“願いは叶った”。

確かに叶った。

ただし――解釈の暴走によって。

百人のリュカが、一斉に泉を見た。

そして、誰かが言う。

「……次に願うときは、ちゃんと考えような」

「それ、百人全員が同時に言うセリフじゃないだろ」

「いや、むしろ説得力あるだろ」

沈黙のあと。

百人のリュカは、同時にため息をついた。

そして――同じ結論に至る。

「とりあえず脱出しよう」

こうして、泉のダンジョン史上最も騒がしい冒険者集団が、百人規模で出口を探し始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ