昔作った「なんでも言う事を聞く券」を使って主人公と結婚する可愛い男の娘の小説を書いて下さい!
放課後の教室は、夕焼けに染まって静かだった。
窓際の机に、ひとり分だけ影が伸びている。
その手の中で、薄く色あせた紙が揺れた。
――「なんでも言う事を聞く券」
子どもの頃にふざけて作った、ただの紙切れ。お互いに一枚ずつ持っていたはずの、しょうもない約束ごと。
「……まだ、持ってたんだね」
声の主は、教室の入口に立っていた。
柔らかい銀色の髪が夕日に透けて、きらりと光る。小柄で華奢な体つき、けれどどこか芯のある立ち姿。
可愛い男の娘――昔からずっとそうだった彼が、少しだけ困ったように笑っていた。
「うん。なんとなく、捨てられなくてさ」
主人公は苦笑しながら、その紙を指でつまむ。
「で? 今日はそれを使うつもり?」
冗談めかした声だった。けれど、その奥に少しだけ緊張が混じる。
彼は一歩、教室の中へ入ってきた。
「……使う、よ」
その一言で、空気が変わった。
夕焼けの音が、やけに遠くなる。
「“なんでも”だもんね」
静かにそう言って、彼は主人公の前まで歩いてくる。いつもより近い距離。視線が自然と絡む。
そして、少しだけ目を伏せてから――
「……ぼくと、結婚して」
冗談のように軽く言うはずの言葉なのに、声は真剣だった。
主人公は一瞬、固まる。
紙を持つ手が、少しだけ震えた。
「それ、本気で言ってる?」
「うん」
即答だった。
迷いがない声。
でも、次の瞬間、彼は少しだけ笑った。いつもの、少し照れくさそうな笑い方。
「……って言ったら、困る?」
「困るっていうか……さすがに、急すぎるだろ」
主人公は頭をかきながら、視線をそらす。
けれど、彼は逃げない。
ずっと昔からそうだった。負けず嫌いで、でもどこか寂しがりで。気づけば隣にいて、当たり前みたいに一緒にいた存在。
「ねぇ」
小さな声。
「“なんでも言う事を聞く券”だよ? 嘘はなし」
夕焼けの中で、その言葉だけがやけに現実味を持って落ちてくる。
主人公はしばらく黙って、それから小さく息を吐いた。
「……あのさ」
紙をひらひらと揺らす。
「これ、俺も持ってるんだけど」
「え?」
彼の目が、少し丸くなる。
主人公はポケットから、同じように色あせた紙を取り出した。
「ずっと昔、返すタイミング逃してさ。使うなら一緒のほうがいいかなって思ってた」
沈黙。
やがて彼の頬が、じわりと赤くなる。
「……ずるい」
「どっちがだよ」
軽く笑い合った、その瞬間。
夕焼けの光が、少しだけ優しくなった気がした。
主人公は一歩近づく。
「じゃあさ」
紙を軽く振る。
「条件追加していい?」
「……うん」
「結婚、っていうか」
少しだけ間を置いて。
「これからも、ずっと一緒にいる。ってことでいい?」
彼は目を見開いて、それからゆっくりと頷いた。
「……それなら、ずっと前から同じこと思ってた」
沈む夕日が、教室の床を金色に染めていく。
紙切れはもうただのきっかけにすぎない。
大事なのは、その先にあった時間と、これから続く時間だ。
「じゃあ決まり」
主人公は笑って手を差し出す。
「改めて、よろしく」
彼はその手を取る前に、少しだけだけど確かに笑った。
「うん。よろしく」
夕焼けの教室で、二人の影がひとつに重なった。




