主人公の可愛い男の娘が異世界転移する話を書いて下さい!
夕方の帰り道、駅前の雑踏の中で——世界は、音ごと途切れた。
「……え?」
視界が白く弾ける。
足元のアスファルトが消え、代わりに冷たい風が頬を撫でた。
次の瞬間、主人公の少年は草の上に倒れ込んでいた。
「なに、ここ……?」
起き上がると、そこは見知らぬ森だった。
空はやけに高く、色が少しだけ違う。青が深く、雲はゆっくりと流れている。
制服のまま。スマホは圏外。周囲にビルも電線もない。
完全に、現実じゃない。
「……異世界転移とか、そういうやつ?」
自分で言っておきながら、乾いた笑いが漏れた。
少年——見た目は中性的で、柔らかい髪と整った顔立ちから「男の娘」とよく呼ばれる彼は、状況の異常さを理解しながらも、どこか現実感が薄かった。
「いやいや、ないでしょ……そんなの」
そのときだった。
草むらが揺れた。
「っ……!」
反射的に後ずさる。
だが出てきたのは、魔物でも怪物でもない。
小さな兎のような生き物。ただし、角が生えていて、目が淡く光っている。
「え、なにそれ……ファンタジー過ぎるんだけど」
兎はこちらを見上げ、数秒固まったあと——ぴょん、と逃げていった。
静寂。
「……うん。異世界、確定だね」
あまりにも軽い結論。
だが、その軽さは恐怖を押し流すためのものでもあった。
森の奥から風が吹く。
その風に乗って、かすかな声がした気がした。
「……こちらへ」
誰かの声。
少年はゆっくりと立ち上がる。
「行くしかない、か」
スカートではないはずの制服の裾を軽く叩き、森の奥へ一歩踏み出した。
その瞬間——
足元に淡い光の紋様が浮かび上がる。
「えっ、ちょ、待っ——」
言い終わる前に、視界が再び反転した。
光と風と重力が一気にねじれる。
次に目を開けたとき、彼は石造りの大広間に立っていた。
王宮のような場所。
目の前には、豪奢な服を着た人々と、剣を持った兵士たち。
そして玉座の上から、ひとりの女性がこちらを見ていた。
「……ようこそ、“異界より来たりし者”よ」
静かに響く声。
少年はぽかんとしたまま、つぶやく。
「いや……ほんとに来ちゃったんだけど」
誰かが息を呑む音が広間に響いた。
その瞬間、物語は静かに動き出す。
——彼が“何者として呼ばれたのか”も知らぬままに。




