主人公の可愛い男の娘冒険者がダンジョンの罠に掛かり5人に増える主人公を書いて下さい!
石造りの迷宮は、いつもより静かだった。
湿った空気、遠くで滴る水音、そして足元にうっすらと光る魔法陣の残滓。
「……ん? なんだこれ」
銀色がかった髪を揺らしながら、可愛い男の娘冒険者リュカは立ち止まった。細身の体に軽装の革鎧。ぱっと見は少女と見紛うほどの容姿だが、本人はれっきとした一流志望の冒険者である。
床に刻まれた魔法陣は、すでに起動しているようだった。
次の瞬間。
「え——」
視界が白に弾けた。
身体の輪郭がほどけるような奇妙な感覚。引き裂かれる痛みではない。むしろ、増えていくような、分かれていくような感覚。
そして——
「……え?」
同じ声が、五つ同時に響いた。
魔法陣の上に、同じ顔の少年が五人立っていた。
銀髪、琥珀色の瞳、同じ軽装の革鎧。違いはほとんどない。ただ、微妙に表情や立ち方の癖が違っていた。
「な、なにこれ……俺が……増えた?」
中央のリュカ1号が呟く。
「落ち着け落ち着け、落ち着こう……たぶん分裂系の罠だこれ!」
右側のリュカ2号は腕を組み、やや冷静に状況を分析しようとしている。
「えっ、えっ、ぼ、僕がもう一人……じゃなくて五人……?」
左端のリュカ3号は完全に混乱していた。
「面白いじゃん! これ戦力五倍ってことだろ?」
後ろにいたリュカ4号は、なぜか一番楽しそうだ。
そして最後のリュカ5号は、少し離れた場所でぽつりと呟いた。
「……これ、戻れるのかな」
一瞬、沈黙。
五人のリュカが、同時に顔を見合わせる。
同じ顔なのに、微妙に違う性格。まるで一人の心が五つに割れたかのようだった。
「とにかく!」
1号が手を叩いた。
「ここダンジョンの中だし、まずは脱出優先! いいね?」
「賛成」 「うん」 「おっけー」 「……うん」
意見はすぐにまとまった。
だが、問題はここからだった。
「で、誰が先頭行く?」
その一言で、空気が少しだけ重くなる。
5人のリュカは同時に自分を指さしそうになり——
結局、ジャンケンが始まった。
ダンジョンの奥深くで、世界でも類を見ない「同一人物5人パーティ」が誕生した瞬間だった。
しかも本人たちはまだ気づいていない。
この“分裂”が、ただのトラブルではなく——ダンジョン攻略の常識すら変える異常事態の始まりだということに。




