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異世界勇者の大親友  作者: 屋根裏部屋
第一章 
11/15

『オールド・ファッション』

 俺が7歳になるころには、ノックもかなり魔法が使えるようになっていた。魔力を感じられるまでがかなり長かったが、それ以降の伸びの速さは間違いなく俺以上だ。

 魔法の扱いについてはこの2年で俺もかなり成長している。まだまだ追い抜かれることは無さそうだが、ウカウカしているとやばい。

 この2年で俺が出来ることになったことと言えば、魔法の同時発動だ。一度に複数の魔法を作り出せる。同じ属性の魔法なら6つ。別の属性なら3種まで同時に出せる。

 ストーンショットを6つ同時に放つ様は、ちょっとした兵器みたいだ。威力だって上がってる。試す機会はないけど。


 近接戦闘はどうかというと、俺とノックの差は開くばかりだ。俺の動きも普通の7歳児と比べると十分異常だとロックさんは言うが、ノックと比べるとかなり見劣りする。

 天才っていうのはこういう奴の事を言うんだろうな。


 魔法も剣も、ノックとずっと競い合ってきた。負けたくないという気持ち、努力する楽しさ、どれも前世では縁のなかった感情だ。

 ノックが居なかったら、俺はこんなに頑張れなかっただろう。ノックには感謝している。


 接近戦に関して、ノックはロックさんに追いつきそうな勢いだ。

 ノックとロックさんの差は、もう多分経験の差しかない。パワーはロックさんの方が上だが、速さはもうノックに軍配があがる。ノックがロックさんから一本取る日はかなり近いと思われる。


 

 それをロックさんも気付いてか、

 「お前らにはそろそろちゃんとした師匠が必要だ。」と言う。


 「気配の察知と消し方、細細としたテクニックなんかはまだまだ教えられることも多いが、そんなのは後からでも勝手についてくるもんだ。いいか、よく聞け。悔しいがお前らは俺なんかに師事する器じゃない。俺も教えられることは教えるが、全然足りん。そもそも俺は魔法については一切教えられないからな。剣も魔法も、専門にやってるやつに教わるべきだ。」


 ロックさんはそういうが、俺にとっての師匠はロックさんだ。器じゃない、なんて言葉は聞きたくなかったな。

 でも、俺たちを想ってそう言ってくれているのだ。その言葉に従うべきだろう。


 俺の中には、両親という選択肢がある。

 だけど、この前頼んでみたが「まだ早い」と一蹴された。

 そうだよなあ。7歳児だもんなぁ。去年妹も生まれて、忙しそうでもあるし。


 

 しばらくはこのままロックさんに教えてもらいつつ、両親との交渉も続けて行こう。


そんな事を考えていると、ノックが俺に話しかけてくる。

「なあ、疲れたからトランプやろうぜ。」


この前、修行の息抜きに紙でトランプを作ってノックに教えたんだ。たまにロックさんも交じって3人で大富豪・七ならべ、ばばぬき なんかの定番ゲームをする。ノックはかなり気に入ったようだ。特にポーカーが好きみたいだ。

 賭けみたいなことまで言い出す始末だ。当然金ではなく、負けたら罰ゲームみたいな感じだが。

 こいつの将来が心配だ。なんせ賭けてるときの興奮の仕方が尋常じゃない。地球の現代社会にこいつが生まれていたら間違いなくギャンブルに溺れていただろう。


 まあ喜んでくれる分には良い。

 もう一人いたら、麻雀も一緒にやれるのにな。3人しかいないからまだルールは教えていないが。


「なあーその麻雀って遊び教えてくれよー。3人でも出来ないことはないんだろー?」


「俺はサンマは認めない。」道具は用意しといてやるから、メンツをそろえろ。あと一人だ。」


「お前、村に住んでるんだからお前が引っ張ってこいよー。山奥に暮らしてる俺が人を集めるなんて出来るわけないじゃんよー。なー頼むよー。そのマージャンとかいう奴で賭けがしてえんだよぉー。俺、賭けがないと生きていけない体になっちまったんだ。」


この7歳児は本格的に心配だ。

今では修行で競うときも負けたらペナルティを課そうと言い出す始末。その方が断然燃えるのだという。事実、罰ゲームがかかってるときのコイツの集中力はヤバい。


そんなこんなで今年の秋も深まったころ、

「おい!明日からジジイの知り合いが遊びに来る!!!麻雀やろう!!今のうちにルールを教えてくれ!!」

興奮してまくし立てるノック。


そうか…ついに異世界で麻雀をする時が来たか・・・!

役を覚えるのは普通の7歳児にはきついだろうが、ノックなら余裕だろう。

ロックさんも頭はかなりキレるほうだ。すぐにルールを覚えてくれるだろう。


ハイはすでに用意してある。魔物の角で作ったとっておきのハイがな。

ふふふ楽しみになってきたぞ。

前世で友達のいなかった俺は、ネット麻雀ばっかりやってたんだ。友達と卓を囲むのは夢の一つだったんだ。



翌日、ノックの家にお邪魔すると、ロックさんの知り合いとは思えない(失礼な話だが)、とても綺麗なお姉さんが座っていた。

 ウェーブのかかった灰色の長い髪に、ややキツめの印象を受ける二重瞼。スッと通った鼻筋はまぎれもなく美人の特徴だった。

 憂いのある表情で煙草を吸う姿は、まさしくクールビューティーという感じだ。

 ちなみにこの世界にも煙草はある。おれは興味ないが。


 女性に対する免疫が少ない俺は、思わず彼女を見てドキドキしてしまった。


 「このババアは薬師のフィレットさんだ!!」

 

 この糞ガキ!なんて紹介の仕方しやがる!こんな美人なお姉さんをババア呼ばわりとは許せん!


 「初めまして。フィレット・マーシーだ。よろしくね。ずいぶんと面白い遊びを知ってるじゃないか。ルールはこの糞ガキから聞いたよ。さっそく始めようじゃないか。」


 ノックにヘッドロックしながらフィレットさんは言う。

 畜生、羨ましい。ノックの後頭部にはフィレットさんの柔らかい胸の感触があることだろう!!


 「ちょ、痛たたたたた!!ほんとの事を言われて怒るなよ!!お前50過ぎたババアじゃねえか!個性で若作りしやがってコンチクショウ!!!!」


 その言葉に俺は唖然とした。そんな個性があるのか・・・


 

 聞くところによると、フィレットさんの個性は『時遅れの容姿オールド・ファッション』というらしい。30を過ぎて必死で若作りをする中で発現した一つ目の個性らしい。ちなみに薬師になったのも、美肌を保つためにいろんな効能を持つ植物なんかを片っ端から勉強していたら自然と身に着いた知識を生かしたものだという。天職は知らない。


畜生。聞きたくなかった。

世の中には知らない方がいいことなんていっぱいある。

それにしても、天職の職業に就かないって結構あるんだな。ロックさんもフィレットさんもどちらも天職とはちがう職業についていた。これが普通なのだろうかと思いかけたが、そうではなく、二人が特殊なのだとロックさんは教えてくれた。




麻雀をしながら聞いたが、フィレットさんがロックさん宅に来た理由は二つあるらしい。一つ目は

「こいつの彫刻が結構好きでね。たまーにきては作品を買ってくんだ。こんな厳ついツラしてるのに、どうしてこんなに繊細な彫刻が出来るのか全く不思議だよ。」


フィレットさんの言葉に、ロックさんはワハハと愉快そうに笑いながらハイを捨てる。あ、それポンしたい。

「ポ・・」

 「ロン! 立直 断幺九 平和 一盃口 三色 ドラ! あ!裏ドラも乗った。!」

 いきなり倍満をかましたのはノックだ。こいつこういうの本当に強いな。


 ちなみにポーカーなんかでは全くノックには勝てない。実力も相当だが、こいつは天に愛されているとしか思えない運をもっている。


 開幕早々とびそうなロックさんはしょげている。可愛いおっさんだ。


そんなこんなで盛り上がり、二つ目の理由を聞き逃していたが、それを聞けたのは麻雀を終えた後の夕食の時間だ。

ちなみに今日はノックの家に泊まることをアリスには言ってある。ノックの事、森に入り浸っていることを打ち明けたのは最近だが、対して怒られなかった。基本的にうちの親はそういう部分は結構甘いな。この前怒られたのは、何も言わずに突然帰ってこなかったからだ。


さて、フィレットさんが、話が途中でそれたが、


「それで、もう一つの理由ってのはなんだ?いつもはこの時期には来ないだろ。こんな時期に来たら帰り道は冬に入りかねない。よっぽどの理由なんだろ?」


「あぁ・・・それなんだけどね。言うか迷ってたんだが、あんた、もうすぐ死ぬよ。」

 

 

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