王女への求婚
一時間が過ぎた――
オリオンはゆっくりと目を開けた。
まるで体が計算されたリズムで動くかのように、静かにベッドから起き上がる。
鏡の前へと歩み寄り、しばらく自分の姿を見つめた。
それから服を着替え始める。
真っ白なスーツ。
その仕立ては完璧で、彼の地位と存在感を際立たせていた。
足元には光を映す黒い靴。
金色の髪に手を通し、一本一本整えていく。
仕上げに香水を軽くひと吹き。
落ち着いた――高級な香り。
最後にもう一度鏡を見て、かすかに笑った。
「……悪くない」
部屋を出る。
廊下で――
ミーナと出会った。
青いドレスが柔らかく身体に沿い、
長い黒髪が背中に流れている。
黄金の瞳が生き生きと輝いていた。
彼を見ると足を止め、微笑む。
「オリオン……今日はすごく格好いいね」
オリオンは穏やかに笑い返した。
「ミーナも……そのドレス、よく似合ってる」
そして尋ねる。
「ミラは?」
二人は並んで階段を降りながら、ミーナが答えた。
「お母様と一緒にホールにいるよ」
ホールに到着する。
そこにはオリアナがいた。
黒く輝くドレス。
長い金髪が肩に流れ、青い瞳は静かな自信を宿している。
その隣にはミラ。
赤いドレスに長い黒髪。
黄金の瞳が印象的だった。
オリオンは微笑んだ。
「母上、ミラ……今日は二人とも綺麗だ」
オリアナは近づき、優しく彼の襟を整える。
そして誇らしげな目で見つめた。
「今日は王城に行くのよ。当然、このくらいはね」
少し間を置いて、柔らかく続ける。
「本当に誇りに思っているわ、オリオン。生まれた時から……あなたがこのヴァレリウス家を高みへ導くと分かっていた」
小さく微笑む。
「他の貴族たちも、私たちに嫉妬しているわ。あなたの会社も……その発明も」
ミラが興味深そうに口を開いた。
「ねえオリオン、本当にどうやって作ったの?電気とか、テレビとか、カメラとか……」
オリオンは笑ったが、その瞳の奥にわずかな緊張が走る。
「ただ……頭の中で思い描いて、それを形にしているだけだ」
――本当のことは言えない。
俺が別の世界から来たなんて。
その時――
シーロンが入ってきた。
黒いスーツに、白髪が混じる黒髪。
金色の瞳は静かで鋭い。
「準備はいいか」
そう言いながらオリオンの肩に手を置く。
珍しく、わずかに笑った。
「誇りに思うぞ、オリオン」
オリオンも微笑み返した。
やがて――
一行は王城へと到着した。
門へ向かう途中、
記者やカメラマンが絶え間なく撮影している。
光、声、喧騒。
オリオンは小さくため息をついた。
「……カメラなんて作らなければよかったな」
騎士たちが門を開く。
ヴァレリウス家は中へと入った。
内装は――豪華そのもの。
白と金で統一された壁、
高くそびえる柱。
そして王の間へ。
そこには――ソラリス王家。
王シリウス。
四十代、赤い宝石の王冠、黒髪、赤い瞳。
王妃セリナ。
白い長髪に灰色の瞳、静かな美しさ。
そして――
王太子アドリアン。
二十三歳。
端正な顔立ちに鋭い知性。
ミラとミーナは明らかに惹かれていた。
最後に――
アリシア王女。
白い長髪、赤い瞳。
現実離れした美しさ。
オリオンと同い年だった。
ヴァレリウス家は跪く。
王が手で合図し、立たせた。
シーロンが言う。
「お招きいただき光栄です」
王は微笑んだ。
「こちらこそ。特に――オリオンのおかげでな。我が国は他国を凌ぐ発展を遂げた」
王妃が言った。
「どうぞ、食事へ」
長い白いテーブル。
豪華な料理と果物が並ぶ。
シーロンとオリアナは王と王妃と談笑。
ミラとミーナはアドリアンと楽しげに話している。
そして――
オリオンはアリシアの向かいに座っていた。
彼女が微笑む。
「あなたがオリオンね。テレビ、とても気に入っているわ」
オリオンは静かに答えた。
「ありがとうございます、王女殿下。まだ新しい発明も控えています。気に入っていただければ嬉しい」
食事が終わると――
オリアナはシーロンに何かを囁く。
(縁談の話だ)
一方でミラとミーナは、どちらが先にアドリアンに想いを伝えるかで小さく言い争っていた。
オリオンは席を立ち、バルコニーへ向かう。
そこにはアリシアがいた。
月を見上げている。
隣に立ち、静かに言った。
「今夜の月は綺麗ですね」
「ええ……静かで」
彼女はゆっくり振り向く。
「何の用?」
わずかに目を細める。
「さっきから私に近づいているわね。何か言いたいことがあるんでしょう?」
オリオンは一礼した。
「はい、アリシア王女殿下」
顔を上げ、まっすぐに見つめる。
「私はヴァレリウス家のオリオン」
一瞬の間。
そして――
「どうか、私と結婚していただけませんか」
沈黙。
空気が止まる。
アリシアは静かに彼を見つめた。
その瞳に、かすかな光が揺れる。
「……結婚?」
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