6話
アクセスいただき、ありがとうございます。
今回は少し短めです。
ストックが切れてしまったので、次回は短めのおまけ話になります。
20時頃更新いたしますので、よろしくお願いいたします。
オーシャンに導かれるようにたどり着いた部屋は、外から見た壮麗さとは裏腹に、不思議と落ち着く空間だった。
白い貝殻で形作られた壁には淡く青い光を放つ海藻が置かれ、水面を固めたように透き通った青いテーブルには、色とりどりの珊瑚が丁寧に飾られている。
大きな窓の向こうでは、小魚たちが楽しげに泳ぎ、エウフェミアに挨拶をするかのように尾びれを動かした。
「散らかっていたから、少し慌てて片付けたんだ」
オーシャンは恥ずかしそうに笑って言った。
「まあ、私のために?ありがとう、とても落ち着く良い部屋ね」
案内されたテーブルの前のソファーに腰掛けながら、エウフェミアは楽しそうに言った。
その目は興味深そうにあたりを見回している。
「あの、光っている海藻は何かしら?」
オーシャンがエウフェミアの数々の疑問に答えていると、ドアがノックされる音がした。
「入れ」
静かに扉が開く。
そこに立っていたのは、長い水色の髪を緩やかに後ろでまとめた侍女だった。
彼女は銀色のカートを押していた。
そこには透き通ったガラスの茶器と、砂糖がまぶされてきらきらと光を反射しているクッキーや貝殻を模した小さな焼き菓子、海を溶かしたかのように青く透き通ったゼリーなどのお茶菓子が載せられていた。
「お茶をお持ちいたしました」
その声を聞いた瞬間、エウフェミアは目を見開いた。
「……あら?あなたどこかで……」
どこか聞き覚えがある声だった。
侍女は微笑んで、エウフェミアの髪を触った。
「御髪が乱れていますよ」
そう言い、手早く髪を整える。彼女の指先が触れるたびに、淡い水の光が髪を滑っていった。
「あなた、もしかして……わたくしの髪をよく整えてくれる精霊さんかしら?」
侍女は少し嬉しそうに答えた。
「はい。ようやく本来の姿でお会い出来ました。地上では力が削られてしまって……あのような姿しかとれないのです」
「もちろん、この場所でもあの姿をとることは可能ですよ」
侍女はくすりと笑った。
「オーシャン様をからかう時は、幼い姿の方が都合が良いのです。」
そこまで言うと侍女はくるりと宙返りをした。
その瞬間、泡のような淡い光が彼女を包み込み――次の瞬間には地上で見慣れた幼い姿へと変わっていた。
『こっちが、いい?』
精霊は得意げにくるりと回った。
「ありがとう、こちらの姿も素敵ね。でも、さっきの大きい姿も似合っていたわ」
『ほんと?』
精霊は嬉しそうに光をチカチカさせた。
『ほめられて、うれしい』
『おーしゃんさまも、すごくがんばってたよ』
精霊が口を滑らせる。
「……!おい!」
『おへや、さんじゅっぷんでかたづけるーって』
「余計なことを言わなくていい……」
オーシャンは気まずそうに目をそらした。それを見ていたエウフェミアは、小さく笑った。
「まあ、そんなに急いで準備をしてくださったの?」
「別にたいしたことじゃない」
そう言いながらも、その耳は少し赤みを帯びていた。
そして、仕切り直すように言った。
「そろそろ本題に入ろうじゃないか」
エウフェミアは、海中に来た目的を思い出した。
「そうね、ここが綺麗すぎてお話を聞くのを忘れていたわ」
「なぜ、王都には聖女リリーがいるのに水不足は起こっているのかしら?」
オーシャンは先ほどまでの照れた空気をすっと引っ込めた。
そして真剣なまなざしでエウフェミアを見つめた。
「この話を聞けば、もう以前と同じではいられない。それでも聞くか?」
「ええ、聞くわ。聞かなければいけないと思うの」
オーシャンは、エウフェミアの覚悟を確かめるかのように、真剣なまなざしで彼女の瞳を見つめ、言った。
「まず、なぜ聖女のリリーがいるのに水不足が起こっているかという問いに対してだが……人間たちが呼ぶ“聖女”というものは本来存在しない」
衝撃的な事実に、エウフェミアは絶句した。
「……聖女が、存在しない?」
「ああ、そうだ」
オーシャンは答える。
「では、なぜリリーが祈ると、水晶は光るのでしょうか」
エウフェミアは疑問を口にした。
すると、控えていた侍女姿に戻った水の精霊がオーシャンに目をやった。
「その説明は私にさせてください。オーシャン様」
オーシャンは静かに頷いた。
「聖女判定の儀の時、私もエウフェミア様のお側におりました」
水の精霊は静かに目を伏せた。
「あの日、あの場には多くの水の精霊が集まっておりました……もちろん人間たちには見えていなかったでしょうけれど……」
彼女の声とともに、記憶がほどけるように、エウフェミアの脳裏にはあの日の光景がゆっくりと蘇っていった。
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