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婚約破棄された公爵令嬢ですが、実は水の女神の娘でした~海の神に溺愛されて、王都には戻れません~  作者: 第三次ニート危機


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15話

アクセスいただき、ありがとうございます。


海辺では、再び、エウフェミアが桶の水と向き合っていた。


「水の声を聞くんだ」


オーシャンの声が飛ぶ。

エウフェミアは静かに目を閉じ、集中した。

すると、桶の水がゆっくりと浮かび上がってきた。

先日までは跳ね回るだけだった水が、今日は球体を保っている。


『おおー』

『うまくなった!』


精霊たちが歓声をあげた。

エウフェミアはその歓声を聞き、より息を詰める。

水球はゆっくりと桶に戻っていった。


「ふぅ……」


エウフェミアは、額に浮き出ていた汗を拭う。


「上手くなってきたじゃないか」


オーシャンはエウフェミアを褒めた。


「ええ、少し家でも練習したのよ」


エウフェミアは微笑んだ。

オーシャンは満足そうに頷いた。


「よし、次の段階だ」


「え?」


エウフェミアは沖に視線を向けたオーシャンをいぶかしげに見つめた。

そして、オーシャンの視線の先へと目を向ける。

月明かりの下、昨日見た巨大な沈没船が静かに海底へ沈んでいた。


「まさか……」


嫌な予感がした。

オーシャンが平然と言う。


「あれを浮かび上がらせてみろ」


エウフェミアは固まった。


「無茶よ!」


思わず叫ぶ。

つい先ほどまで、桶の水を浮かせていた人間に言う段階ではない。


「桶の次が海なの!?」


『そうだそうだ!』

『いきなりは、むずかしい!』


精霊たちまで口々に抗議する。


オーシャンはエウフェミアを見つめた。


「もちろん、私も手伝う。ほら、手をこちらへ」


エウフェミアは差し出された手をためらいながら握った。

ひんやりと心地よいものが流れ込んできた。


「感じられるか?」


オーシャンは問いかけた。


「ええ、何かひんやりとしたものを感じるわ」


「今から、お前を経由して海に力を流す。その流れを意識しろ」


エウフェミアは頷いた。


「分かったわ」


「では、もう片方の手を海へ向けろ」


エウフェミアは言われたとおり、左の手のひらを海へ向けた。


「こうかしら?」


「ああ、それでいい。始めるぞ」


オーシャンがそう言った瞬間、ひんやりとした力が、右手から身体を通って左手へと流れ込んでくる。

初めて感じる大きな力に、エウフェミアの額には玉のような汗が滲み、流れていく。

途端に、エウフェミアの身体が淡く光り輝き、銀色の髪がふわりと浮かび上がった。

ざわり、と海面が大きく波打った。

先ほどまで穏やかだった波が渦を巻き始める。

海底の沈没船の周囲から、無数の泡が立ち昇った。


『がんばれ!』

『もうすこし!!』


精霊たちが応援する。

だが、次の瞬間――

ごうっ、と巨大な水柱が海面から立ち上がった。


「きゃっ!!!」


エウフェミアは思わず悲鳴をあげる。

力が強すぎる。


「制御出来ないわ!」


エウフェミアはオーシャンに叫んだ。


「大丈夫だ、私がいる。安心しろ」


オーシャンはエウフェミアを宥める。


「もう少し抑えるんだ」


エウフェミアは歯を食いしばり、流れ込む力を意識した。

海へ向かって暴れていた力が、少しずつ1つの方向へまとまっていく。

ごうごう天へ伸びていた水柱が、次第に細くなった。

代わりに海面が大きく盛り上がる。

ざばんっ。

海底から巨大な船首が姿を現した。

水を至るところから滝のように流している船体が、月明かりを受けて黒々と輝く。


『おお!』

『でてきた!!』

『ふねだ!』


精霊たちが歓声を上げた。

エウフェミアは荒い息を吐く。


「できた……?」

「ああ」


オーシャンは満足そうに頷いた。


「初めてにしては上出来だ」


海面に浮かぶ巨大な船を見上げながら、エウフェミアは大きく息を吐いた。



*****



町長との会話を終えたライオネルは、1人で港町を歩いていた。

潮風が髪を撫でる。


「今更謝りたいなどな」


自分の口から出た言葉を思い返し、苦笑する。


「虫が良すぎる」


ライオネルは小さく息を吐いた。

港には今日も活気があった。

漁師たちの威勢の良い声が飛び交い、子供たちが駆け回る。

王都では久しく見ていない光景だった。


「ありがとうございました!」


不意に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

ライオネルの足が止まる。

それに吸い寄せられるように視線を向けた。

海辺の食堂、そこから出てきた店員とおぼしき女性が客を見送っている。

銀色の髪が潮風に揺れた。

ライオネルは息を呑む。

見間違えるはずがない。


「……エウフェミア」


無意識に零れたその名に、女性がふと顔を上げた。

視線が交差した。

水色の瞳が大きく見開かれた。

――向かっているとは聞いていた。

だが、まさか、今ここで……


「殿下」


唇がそう形作った。


最後までお読みいただきありがとうございます。

もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。


感想もとても嬉しいです。今後の執筆の参考にさせていただきます。


引き続き、本作をよろしくお願いいたします。

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