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婚約破棄された公爵令嬢ですが、実は水の女神の娘でした~海の神に溺愛されて、王都には戻れません~  作者: 第三次ニート危機


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14話

アクセスいただき、ありがとうございます。

遅くなりました。


海底から姿を現した巨大な沈没船を、エウフェミアは呆然と見上げた。


「本当に使えるの?」


オーシャンは当然のように答える。


「ああ、この国の民くらいなら、全員乗せられる」


エウフェミアは目を瞬いた。


「でも、そんな大きさには見えないわ」


「船の大きさなど関係ない」


次の瞬間、海面が大きく波打った。

巨大な鯨が姿を現し、その周囲をウミヘビのような魔物たちが悠然と泳いでいく。

更に沈没船を中心に、海底から珊瑚が急激に成長し始めた。

枝を広げるように伸びた珊瑚は船体を包み込み、小さな島のような形を創り上げていく。

エウフェミアは思わず息を呑んだ。


「これは……」


「海の者たちが支える」


オーシャンは穏やかに続ける。


「魚が食料を運び、海が進路を示す。住居が必要なら珊瑚を育てよう」


その光景は、もはや船というより、1つの島だった。


「王都から逃げたい者を運ぶなんて、本当に出来るの?」


「出来る」


オーシャンは迷いなく答えた。


「問題は、お前が決断出来るかだ」


エウフェミアは目を閉じ、思案した。

自分が動けば、王国を見捨てることになる。

しかし、何もしなければ救えるはずの人々が死んでいく。

脳裏に浮かぶのは、ミント町へ流れ着いた衰弱した子供たちの姿だった。

小さく息を吐く。

そして、決意を言葉にした。


「……助けたい」


その声に迷いはなかった。

オーシャンは静かに微笑んだ。


「ならば、準備を始めよう」


潮風が吹き抜けた。

それに答えるように、巨大な鯨が低く鳴いた。



*****



港町に着いた翌日、ライオネルは側仕えと共に町長に会いに行った。

身分を伝え、町長に取り次いで貰う。

案内された応接間で、紅茶を口に含んだ。

豊かな香りが鼻を抜ける。

王都では、今や味わうことの出来ない、アルコールを含まない嗜好品だった。

窓の外からは、子供たちの笑い声が聞こえてくる。

昨日見た市場も活気に満ちていた。

魚は豊富にとれ、水も潤沢にある。


(この町なら――)


ライオネルは静かに考えた。


(王都の民を受け入れることは出来ないだろうか)


ライオネルが、ふかふかの椅子に深く腰掛けていると、町長がやってきた。


「お待たせいたしました、殿下」


「いや、突然の訪問だったのに、急な対応ご苦労」


ライオネルは鷹揚に答えた。


「今回のご訪問はどういった要件で?」


町長は、ライオネルの顔色をうかがった。


「最近、この町に王都からの民が流れているのをご存じか?」


町長は頷く。


「はい、もちろんです。こちらとしても、急激な人口増加に対応策を講じねばと思っているところでした」


ライオネルは僅かに身を乗り出した。


「追加の受け入れは、可能か?」


町長は困ったように眉を下げた。


「こちらも、もう限界が近く……正直なところ厳しいですね」


「そうか……」


ライオネルは表情を曇らせる。


「宿も空き家も限りがあります。今はなんとか回っていますが、このまま増えれば難しくなるでしょう」


町長の言葉にライオネルは頷いた。

予想していた答えだった。

しばしの沈黙が落ちる。

そのとき、ふと昨日の魚売りの言葉を思い出した。


――海辺の定食屋にえらい別嬪さんが来てからだって噂をしてる奴らはいるな


ライオネルは何気ない口調を装った。


「ところで」


町長が顔を上げる。


「最近、この町へ若い女性が来ていないか?」


町長はいぶかしげに眉をひそめる。


「若い女性、ですか?」


「ああ」


ライオネルは頷く。


「銀髪で、水色の瞳をした女性だ」


その瞬間、町長の表情が僅かに変わった。

しかしすぐに元の穏やかな笑みに戻る。


「その女性をお捜しで? どういったご関係でしょうか?」


ライオネルは一瞬言葉に詰まった。

元婚約者。

そう答えるべきなのだろう。

だが、その言葉だけでは、彼女を探している本当の理由について何も伝わらない気がした。

かつて、自分は彼女を理解しようとしなかった。

婚約者でありながら、何を考え、何を感じていたのか知ろうともしなかった。

今になって探し回っているなど、あまりにも虫が良すぎる。

ライオネルは静かに息を吐いた。


「……以前は婚約者だった」


町長の目が僅かに細まる。


「以前は?」


「婚約は、解消した」


町長はしばらく考え込むように黙っていた。

食堂の店主から聞いた娘の顔が脳裏をよぎる。


「では、なぜ今更?」


ライオネルは、返答に窮した。

王都を救うため。

そう答えることも出来た。

実際、それも理由のひとつだった。

だが、それだけではない。

エウフェミアの行方を追ううちに、何度も考えていた。

もし、再びエウフェミアに会えたら、自分は彼女に何を伝えたいのだろうか、と。


「……謝りたい」


気付けば、そんな言葉が口をついていた。


「一度も話を聞かなかったまま、終わらせたくはない」


最後までお読みいただきありがとうございます。

もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。


感想もとても嬉しいです。今後の執筆の参考にさせていただきます。


引き続き、本作をよろしくお願いいたします。

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