試食会
赤オークの肉も無事に手に入り、まず試したのはトンカツだった。
薄く叩いた赤オークの肉に衣をつけ、遺跡の村で作ったコーン油で揚げる。
ジュワァァァ――。
鍋から心地よい音が響く。
香ばしい匂いが広場いっぱいに広がった。
「できたぞ。」
切り分けると、衣はきつね色に輝き、中の肉からは透明な肉汁が溢れ出した。
俺は一切れ口に運んだ。
サクッ。
その瞬間だった。
「うまい。」
思わず声が漏れた。
普通のオーク肉では感じなかった旨味がある。
臭みもない。
肉は柔らかく、それでいて噛み応えも十分だった。
「これは良いですな。」
サトルさんも満足そうだった。
ユーコは無言で食べ続けている。
皿を見ると、すでに三枚目だった。
「おい。」
「美味しい。」
どうやら大成功らしい。
しかし、またまだ試したいことがあった。
それは塩湖から採れた塩を使った料理だ。
まずはベーコンだった。
赤オークの肉を塩漬けにし、香草を加えて熟成させる。
それを燻製にすると、村中に良い香りが漂った。
「なんだこの匂いは。」
「腹が減る。」
村人たちが次々と集まってくる。
薄く切ったベーコンを焼くと、脂が溶け出し、表面がこんがりと色付いた。
一口食べれば、燻煙の香りと肉の旨味が口いっぱいに広がる。
「酒が欲しくなりますな。」
浪人たちが目を輝かせた。
「まだ昼だ。」
「失礼。」
とは言ったものの、その日の酒場ではベーコンが飛ぶように売れた。
次に挑戦したのは塩鶏の丸焼きだった。
丸ごとの鶏に塩をすり込み、一晩寝かせる。
翌日、炭火でじっくり焼き上げた。
皮はパリパリ。
中は驚くほどジューシーだった。
「塩だけなのに、なぜこんなに美味しいのでしょう。」
ユミさんが感心していた。
「塩は素材の味を引き出すからな。」
俺はそう答えた。
余計な味付けをしなくても、美味しいものは美味しい。
それを改めて実感した。
さらにフェタチーズも作った。
山羊の乳を使い、塩水の中で熟成させる。
最初は皆、不思議そうな顔をしていた。
「腐ってませんか?」
アベリアが恐る恐る聞く。
「腐ってない。」
食べてみると、独特の酸味と塩味があった。
黒パンとの相性も良い。
「これは女性に人気が出そうですわ。」
ユミさんの予想通り、特に女性客から評判になった。
そして最後は味噌だった。
これだけは時間がかかりそうなので、植物加工のスキルを使った。
完成した味噌汁を飲んだ瞬間、皆の反応は一変した。
「ほう……。」
「なんだか落ち着きますな。」
「体が温まる。」
派手さはない。
だが不思議と何度でも食べたくなる味だった。
こうして様々な料理が完成した。
そして王都での試食会。
テーブルにはトンカツ、ベーコン、塩鶏の丸焼き、フェタチーズ、味噌汁が並んでいた。
ヨッシー公とランケは一通り食べ終えると、大きく息を吐いた。
「これなら各国の使節も驚くでしょう。」
「そうか?」
「間違いありません。」
ランケは力強く頷いた。
「魚料理だけでは見せられない、この国の未来があります。」
その言葉を聞いて、俺は少し嬉しくなった。
ヨッシー公の就任式まで、あと少し。
俺たちは最後の仕上げに取り掛かるのであった。




