パーティーの料理
ヨッシー公の就任式が近づいてきた。
王位継承そのものも大事だが、それ以上に各国の要人が集まる祝賀会は重要だった。
新しい王がどのような人物なのか。
どれほどの国力を持っているのか。
どのような文化を築こうとしているのか。
各国の使節たちは、その全てを見に来る。
そんなある日、ランケから相談を受けた。
「リク殿、お知恵をお貸しください。」
珍しく真剣な顔だった。
「どうした?」
「就任式の料理です。」
「ああ。」
「わが国は魚料理には自信があります。しかし肉料理となると、鶏肉を焼く程度しかございません。」
確かにこの国は川と湖に恵まれている。
魚料理は豊富だ。
だが王族の宴となると、それだけでは少々物足りない。
「今回は各国からVIPが来られます。」
ランケは続けた。
「何か珍しい料理を出せないでしょうか。」
「なるほど。」
俺は腕を組んだ。
「わかった。レシピはこっちで考えよう。」
こうして急遽、試作会が始まった。
材料として目を付けたのはオーク肉だった。
他国では広く食べられているらしい。
見た目も味も豚肉に近い。
「ならばまずはトンカツだな。」
俺は衣を付けて揚げてみた。
さらに角煮も作る。
じっくり煮込んで味を染み込ませた。
そして試食会。
参加者は俺、ユーコ、ユミさん、そしてサトルさんだ。
「いただきます。」
しばらく静寂が続いた。
皆が真剣に咀嚼している。
「どうだ?」
俺が尋ねると、
「んー。」
サトルさんが首を傾げた。
「普通ですね。」
「普通か。」
「雑味も多いです。」
ユミさんも頷いた。
「美味しくない訳ではありませんが、王の就任式の料理としては弱いですね。」
俺も同意だった。
確かに食べられる。
だが感動はない。
何かが足りない。
するとサトルさんが口を開いた。
「やはり材料と道具にもこだわったほうが良いでしょう。」
「というと?」
「まず油です。」
「油?」
「コーン油を用意してください。」
なるほど。
揚げ物は油で大きく変わる。
「それから切れる包丁。」
「うむ。」
「そして普通のオークではなく、赤オークの肉です。」
赤オーク。
より上位種の魔物で、肉質も良いと言われている。
「なるほどな。コーン油、包丁、赤オーク肉だな。」
「はい。」
「なんとか揃えてみよう。」
そう言った瞬間から、頭の中で段取りが動き始めた。
コーン油は遺跡の村で作れそうだ。
包丁ならノルドに頼める。
王の就任式まで残された時間は少ない。
各国の要人が舌を巻くような料理を完成させるには、これからが本番だった。




