大魔術師!?
間違いなく塩湖だった。
しかし、普通なら何年もかけて蒸発池を作る。
そこで俺はセシルに来てもらったのだ。
「セシル、ちょっと手伝って欲しいことがある。」
「はい?」
「あの岩を目掛けて、『ファイア』を放ってくれ。」
「それだけですの?」
「ああ。」
セシルは湖畔に立つ大岩へ向き直った。
両手を広げる。
そして深く息を吸った。
「ファイア!」
次の瞬間。
轟音と共に炎が飛び出した。
ゴォォォォッ!
炎が岩にぶつかる。
岩は瞬時に赤熱し、周囲の湖水がジュウジュウと音を立てて蒸発した。
白い蒸気が立ち上る。
「おお。」
思った以上の威力だった。
「やった。」
俺は拳を握った。
「これを続ければ水がなくなるぞ。」
もっとも。
気の遠くなるような話ではある。
(誰か雇って毎日少しずつやってもらうしかないな。)
俺がそんなことを考えていると、
セシルが首を傾げた。
「なんです? 水を蒸発させれば宜しいんですか?」
「ああ、そうだが今日は試しただけだ。」
俺は慌てて手を振った。
「効率は悪いし、セシルにずっと付き合ってもらうつもりはない。安心してくれ。」
するとセシルは不満そうな顔をした。
「そんな。別に大したことではありませんわ。」
「いや、大したことだろ。」
「そうですの?」
セシルは湖を見つめた。
そして少し考えた後、
「では、もう少し本気でやってみますわ。」
と言った。
嫌な予感がした。
ものすごく嫌な予感がした。
「いや、待て。」
「マキシム・ファイア!」
聞いてない。
俺の制止は完全に無視された。
セシルの頭上に巨大な魔法陣が出現する。
空気が震えた。
周囲の木々が大きく揺れる。
「ちょっ——」
言い終わる前だった。
太陽が落ちてきたのかと思った。
轟ッ!!
巨大な火柱が湖へと叩き込まれる。
山全体が揺れた。
凄まじい熱風が吹き荒れる。
俺は思わず地面に伏せた。
数分後。
ようやく熱風が収まり、恐る恐る顔を上げる。
「……。」
言葉が出なかった。
湖が半分になっていた。
本当に半分である。
さっきまであった水面が消え、
むき出しになった湖底がどこまでも広がっていた。
大量の白い塩が太陽光を反射している。
「どうです?」
セシルが得意そうに振り返った。
「これで宜しいですわね。」
「いやいやいや。」
俺は口をぱくぱくさせた。
「それはファイアじゃないだろ。」
「ファイアですわ。」
「違う。」
普通のファイアは焚き火ぐらいだ。
せいぜい家一軒燃やせる程度だろう。
湖を半分消し飛ばす魔法をファイアとは呼ばない。
しかしセシルは本気で不思議そうだった。
「昔は皆これくらい使っていましたわ。」
「嘘だろ。」
「本当です。」
俺はため息をついた。
だが次の瞬間、目の前に広がる白い湖底を見て考えを改めた。
「まあ、結果オーライか。」
これだけの塩が採れれば、
村は何年も困らないだろう。
「リクさん。」
「ん?」
「もう一発やる?」
セシルが笑顔で聞いてきた。
「やらなくていい!」
俺は全力で止めた。
もしもう一発撃たれたら、
今度は湖そのものが消滅してしまいそうだった。




