足手まとい
塩湖を発見した翌日。
俺は村の冒険者であり魔術師でもあるセシルに声をかけた。
「セシル、ちょっと付き合ってくれないか?」
「何ですの?」
「面白いものを見つけた。」
それだけ言うと、セシルは興味を持ったらしい。
「分かりましたわ。」
こうして俺達は再び山へ向かうことになった。
案内役はもちろん浪人四人衆だ。
朝早く出発したものの、山道はなかなか険しかった。
木々が生い茂り、ところどころ足場も悪い。
セシルはローブの裾を持ち上げながら歩いていた。
「なかなか険しい道ですわね。」
「この後、ひと仕事して貰うから、ゆっくりでいいぞ。」
俺がそう言うと、セシルは少し不満そうな顔をした。
「このぐらいは大丈夫です。」
「そうか?」
「ダンジョンの二十階に比べれば、何でもありません。」
「えっ、二十階に行ってるの?」
俺は思わず足を止めた。
セシルも不思議そうな顔になる。
「はい。」
「普通に?」
「普通にですわ。」
俺は言葉を失った。
ダンジョン二十階。
普通の冒険者なら近付くことすらできない階層である。
勇者級と呼ばれる冒険者達の領域だ。
(もう二十階まで行っているのか?)
俺は頭を抱えたくなった。
最近そんなことばかりだ。
気付けば周囲の人間がみんな化け物だった。
結局。
今回も一番の足手まといは俺だった。
「リク、遅い。」
ユーコが振り返った。
「ほっとけ。」
俺は苦笑した。
だが別に焦りはしなかった。
足手まといだから悪いという訳ではない。
むしろ山登りなどでは、足の遅い者がいたほうが安全になることもある。
急ぎ過ぎなくなるからだ。
実際、遭難事故の中には、全員が実力者だったが故に無理をして起こるものも少なくない。
もちろん最後はリーダー次第だ。
しかし世の中というものは、一面だけでは語れない。
強いことが必ず良いとも限らないし、弱いことが必ず悪いとも限らない。
そんなことを考えながら歩いていると、ふと別のことを思った。
人間というのは他人を見るとき、
『あいつは優しい。』
『あいつは怖い。』
『あいつは怠け者だ。』
などと、一面だけを見て決めつけてしまう。
だが実際は違う。
俺自身だってそうだ。
優しい時もあれば、怒る時もある。
のんびりしている時もあれば、短気になる時もある。
真面目な日もあれば、酒場で酔いつぶれる日もある。
人間とは本来そういうものなのだろう。
だから一つの出来事だけを見て、
『こういう人間だ。』
と決めつけるのは危険なのだ。
そんなことを考えているうちに、視界が開けた。
森が終わり、陽光が差し込む。
「着きましたぞ。」
ゴザエモンが指差した。
その先には巨大な湖が広がっていた。
青空を映す水面。
そして岸辺に広がる白い結晶。
セシルは目を丸くした。
「これは……」
「ああ。」
俺は頷いた。
「塩湖だ。」
セシルは湖の水を少しだけ指先につけ、舐めた。
「本当に塩ですわ。」
俺とユーコとセシルの目が輝いた。




