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塩湖

 林業は順調に進んでいた。

 浪人四人衆は毎日のように山へ入り、木を切り出しては川へ流し、筏や舟の材料を集めていた。

 もはや彼らは浪人というより山師である。

 その日も夕方になって村へ戻ってきた四人は、道具を片付けると酒場の前で腰を下ろした。

「ふぅ。」

「今日はずいぶん奥まで行きましたな。」

 ゴザエモンが湯飲みを手に言った。

「ほう。」

 俺も隣に腰掛けた。

「何か見つかったのか?」

「それがですな。」

 別の浪人が頭を掻いた。

「綺麗な湖があったんですよ。」

「湖?」

「ええ。山奥とは思えないほど澄んでおりましてな。」

「それで、喉が渇いておりましたので、一口飲んだんです。」

「飲んだのか?」

「飲みました。」

「そしたら、しょっぱいのしょっぱいの。」

 四人が一斉に頷いた。

「そうなんです。」

「海の水よりしょっぱい。」

「もしや!」

 俺は思わず立ち上がった。

 あまりに急だったので、四人は肩を震わせた。

「ど、どうされました?」

「その湖はどこだ!?」

「山の北側ですが……。」

「大きさは?」

「歩いて一周するのに半日ほどですな。」

 俺の心臓が高鳴った。

 まさか。

 いや、間違いない。

 もし本当にそうなら、とんでもない発見だ。

「リク、どうした?」

 ユーコも不思議そうな顔で聞いてきた。

「明日、その湖まで案内してくれ。」

「もちろんでござる。」

「よし。」

 その日はそれ以上話さなかった。


 しかし俺は夜になっても眠れなかった。

 塩。

 人間が生きるために絶対に必要な資源。

 この世界では岩塩鉱山か海水からしか手に入らず、決して安いものではない。

 だからこそ保存食にも使われ、軍隊にも必要で、国家財政にまで影響する。

 もし本当に塩湖だったなら。

 遺跡の村は鉄に続いて塩まで手に入れることになる。


 次の日。

 朝食を済ませると、俺達は浪人四人衆と共に山へ向かった。

 森を抜け。

 谷を越え。

 獣道のような道をさらに進む。

 そして昼頃。

「見えてきましたぞ。」

 ゴザエモンが指差した。

 木々の向こうが白く光っている。

 俺は足を速めた。

 そして森を抜けた瞬間、言葉を失った。

 目の前には巨大な湖が広がっていた。

 青空を映す美しい湖面。

 だが岸辺だけが不自然なほど白い。

 まるで雪でも積もったようだった。

 俺は岸へ駆け寄った。

 指で白い結晶を摘まむ。

 舐める。

 しょっぱい。

 間違いない。

「塩だ……。」

 ユーコも摘んで舐めた。

「塩。」

 浪人達は首を傾げた。

「そんなに凄いのですか?」

 俺は思わず笑った。

「凄いなんてもんじゃない。」

 そして湖を見渡した。

 岸辺には無数の塩の結晶が輝いている。

 これほどの規模なら何十年、何百年採掘しても尽きないだろう。

「また忙しくなるな……。」

 白く輝く塩湖を眺めながら、俺は確信していた。

 この発見は、遺跡の村の未来を大きく変えることになるだろうと。


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