龍族の問題
リク達が龍族の里に到着してから数日後のことだった。
龍王の館に集められた俺たちは、ようやく本題を聞くことになった。
「あなた方に、龍族の未来を救っていただきたいのです。」
龍王は深々と頭を下げた。
その姿に、里の龍たちも驚いていた。
龍族は誇り高い種族であり、人間に頭を下げるなど滅多にないことだったからだ。
「そんなに深刻なのか?」
俺が尋ねると、龍王は重々しく頷いた。
「こちらへ。」
案内された先は、里の最奥部にある巨大な洞窟だった。
そこには十個もの龍の卵が並んでいた。
どれも人間の子供ほどの大きさがあり、神秘的な輝きを放っている。
しかし――
不思議なことに、どの卵からも生命の気配が弱かった。
「本来なら、とっくに孵化しているはずなのです。」
龍王は一つの卵を優しく撫でた。
「古いものは、通常の孵化期間の二倍以上が経過しております。」
「二倍?」
俺は驚いた。
それは人間で言えば、出産予定日を1年も過ぎているようなものだ。
「原因は分かっているのか?」
「おそらく魔素不足です。」
龍王は苦しそうに言った。
龍族の里は、かつて世界有数の魔素の泉だった。
しかし長い年月の中で少しずつ魔素が減少し、今では昔の半分以下になっているらしい。
大人の龍たちは問題なく生きられる。
だが、生まれる前の卵には致命的だった。
「あと数年もすれば、この卵たちの命は完全に消えてしまうでしょう。」
洞窟に重い沈黙が流れた。
その時だった。
ハクが卵の前へ歩いて行った。
「ハク?」
俺が声をかけると、ハクは卵をじっと見つめていた。
そして、
「この子たち、お腹すいてる。」
と呟いた。
「お腹?」
「うん。魔力足りない。」
ハクは卵に手を当てた。
その瞬間だった。
淡い銀色の光がハクの身体から流れ出した。
「なっ!」
龍王が目を見開く。
光は卵の中へと吸い込まれていく。
やがて――
コンッ。
小さな音が響いた。
「今のは!」
コンッ。
コンコンッ。
次々と卵が震え始める。
龍たちが息を呑んだ。
そして、
パキッ。
最初の卵にひびが入った。
「孵化だ!」
誰かが叫んだ。
パキパキパキッ!
卵の殻が割れ、中から小さな銀龍が顔を出した。
『ピィー!』
元気な鳴き声が洞窟に響く。
それを合図にしたかのように、
パキッ!
パキパキッ!
次々と卵が割れ始めた。
一匹。
二匹。
三匹。
四匹。
ついには十個すべての卵が孵化した。
洞窟は子龍たちの鳴き声でいっぱいになった。
龍王は呆然としていた。
「信じられない……。」
長年も続いていた問題が、わずか数時間で解決したのだから無理もない。
一方のハクは、
「疲れた。」
と言って、その場にへたり込んだ。
どうやら大量の魔力を使ったらしい。
俺は慌てて抱き上げた。
「無茶しやがって。」
「でも、みんな生まれた。」
ハクは嬉しそうに笑った。




