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龍族の里への旅

 龍族の里へ向かう朝は、雲ひとつない快晴だった。

 遺跡の村を出ると、朝露をまとった草原が朝日に照らされて銀色に輝いている。風が吹くたびに草の波がゆっくりと揺れ、その上を小さな白い蝶が舞っていた。

 ハクはそんな景色を見るなり、嬉しそうに駆け出した。

「待て待て、あまり先に行くな。」

 俺が声をかけると、

「大丈夫!」

 そう言って、また走り出す。

 子供というものは、本当に元気なものだ。

 隣ではユーコが大きく欠伸をしていた。

「朝は眠い。」


 道はやがて森へと続いていた。

 森の入り口では、樹齢何百年にもなりそうな大木たちが空を覆っている。

 一歩足を踏み入れると、空気が変わった。

 ひんやりとした湿気。

 土と木々の匂い。

 どこか遠くで流れる沢の音。

 葉の隙間から差し込む木漏れ日が、まるで無数の光の柱のように地面へ降り注いでいる。

「気持ちいいな。」

 俺は思わず深呼吸した。

 森の空気には不思議な力がある。

 肺の奥まで澄んでいくような感覚だった。


 途中、小川が現れた。

 透き通った水の中を小魚が群れをなして泳いでいる。

 ハクは靴を脱ぐと、水の中へ飛び込んだ。

「冷たい!」

 楽しそうな声が森に響く。

 その様子を見ていると、こちらまで楽しい気分になってくる。

 昼頃になると、森は次第に薄くなり、視界が開け始めた。

 そこには巨大な山脈が広がっていた。

 青空へ突き刺さるような峰々。

 山肌にはまだ雪が残り、白銀の帯が幾重にも連なっている。

「おお……。」

 思わず声が漏れた。

 今まで見たどの山よりも雄大だった。

 風が吹く。

 高地特有の冷たい風だった。

 その風に混じって、どこか懐かしいような不思議な気配を感じる。

 ハクは山を見上げながら小さく呟いた。

「帰ってきた気がする。」

 その横顔は、いつもの子供らしい表情ではなかった。

 龍としての記憶が何かを感じ取っているのだろう。

 さらに山道を登る。

 空はどこまでも青く、高度が上がるにつれて雲が足元に見えるようになってきた。


 里を出発して、3日目の夕方。

 最後の尾根を越えた時だった。

 目の前に信じられない光景が広がった。

 巨大な盆地。

 周囲を山々に囲まれたその場所には、無数の水晶が林立していた。

 夕日に照らされた水晶は赤や金色に輝き、まるで星空が地上へ降りてきたようだった。

 その中心には、古代神殿にも似た巨大な白い建造物が建っている。

 そして空には――

 数頭の龍が悠然と舞っていた。

 翼を広げるたびに夕日を受けて輝き、まるで空そのものの主であるかのようだった。

 ハクは立ち止まり、しばらく言葉を失っていた。

 やがて小さく呟く。

「ここが……龍族の里。」

 風が吹いた。

 その風は遠い昔から龍たちが生きてきた歴史を運んでくるかのようだった。


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