ハクの変化
ハクの周りの子供達が変わったように、ハク自身も少しずつ変わってきていた。
以前のハクは、遊ぶことと食べることしか興味がなく、農作業などには見向きもしなかった。
しかし最近では違う。
「ハク、その木箱を運んでくれ。」
「うん!」
そう返事をすると、小さな体で一生懸命木箱を抱え、畑まで運んでいく。
世界樹の眷属樹の果実を収穫するときも、誰よりも張り切って手伝うようになった。
村人達もそんなハクを見て微笑む。
「本当に変わりましたな。」
サトルさんが感心したように言った。
「ああ。」
俺も頷いた。
昔なら面倒臭がっていたことを、今では自分からやるようになっている。
子供達に認められたことが大きかったのだろう。
人は誰かの役に立ったとき、自分の存在価値を感じる。
それは龍も同じらしかった。
そんなハクを見ているうちに、俺は教育について考えるようになった。
もちろん、立派な教育論があるわけではない。
ただ一つだけ決めていることがある。
悪いことをしたら、きちんと叱ることだ。
ある日、ハクが畑の収穫用の籠を壊してしまったことがあった。
しかも、自分で壊したのに黙って隠そうとしていた。
「ハク。」
「うっ。」
俺に呼ばれた瞬間、ハクの顔が青くなる。
「これ、お前だな?」
「ご、ごめんなさい……。」
今にも泣きそうな声だった。
俺はしゃがんで目線を合わせた。
「籠を壊したことは仕方ない。」
「うん……。」
「でも、隠したのはダメだ。」
ハクは俯いた。
「どうしてダメかわかるか?」
「みんな困る……。」
「そうだ。」
俺は頭を撫でた。
「失敗は誰でもする。でも、失敗を隠すのはもっと悪いことだ。」
「うん……。」
「次からはちゃんと言え。」
「わかった。」
ハクは涙目になりながらも頷いた。
俺はそこで話を終わらせた。
怒鳴る必要はない。
ただ、悪いことは悪いと伝えればいい。
本人に悪いことをした自覚があるのに、大人が何も言わず無視するほうがよほど残酷だ。
子供は考える。
自分は見放されたのではないかと。
だからこそ、叱るべき時は叱る。
それが責任だと思う。
その日の夕方。
畑仕事を終えた俺は、夕焼けに染まる村を眺めていた。
隣ではユーコが干し芋を食べている。
「ハク、怒られてた。」
「ああ。」
「リク、怖かった。」
「そうか?」
「うん。」
ユーコは真面目な顔で頷いた。
「でも、ハク嬉しそうだった。」
「嬉しい?」
「うん。」
俺は少し考えた。
確かに最後、ハクは泣いていたが、どこか安心したような顔をしていた。
「そうかもしれんな。」
夕焼けの中、畑から帰ってくるハクの姿が見える。
泥だらけになりながらも、嬉しそうに走ってくるその姿を見ていると、この村の未来は明るいと思えたのだった。




