ハクの悩み
ヨッシー公の敵討ち騒動も無事に終わり、俺たちは久しぶりに遺跡の村へ戻った。
もっとも、王都で活躍した浪人四人も一緒だった。
本来なら、あの戦いの後にヨッシー公の家臣となるはずだったのだが――。
「召し抱えることに変わりはありません。」
別れ際、ヨッシー公は申し訳なさそうに頭を下げた。
「ですが、私が正式に王となった後にお願いできませんか?」
要するに金がないのである。
現在のアレキサンダー家は没落貴族。
新たに十四人もの家臣を養う余裕はなかった。
浪人四人もそれは理解していたらしく、
「もちろんでございます。」
と、快く受け入れていた。
しかし、周囲に聞かれればヨッシー公の面子に関わる。
そこで俺がすかさず口を挟んだ。
「もちろんですよ、ヨッシー公。こちらも村の再建がまだまだ残っています。むしろ助かります。」
「ありがとうございます。」
ヨッシー公は少し安心したように笑った。
これが大人の対応というものだ。
時には本当の理由を言わない優しさも必要なのである。
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村へ戻ると、皆が出迎えてくれた。
戦争孤児たちも元気そうだ。
ホワイトバードは相変わらず子供たちに囲まれている。
アベリアは薬草の整理をしていた。
平和な光景だった。
そして俺は久しぶりにハクの姿を探した。
「ハクー!」
いつもなら飛びついてくる。
しかし――。
「……。」
ハクは木陰に座ったまま、小さく手を振っただけだった。
「おかえり。」
元気がない。
明らかに様子がおかしい。
「どうした?」
「別に。」
そう言うものの、別にではないことは誰の目にも明らかだった。
俺はユーコと顔を見合わせた。
「ハク、元気ない。」
「だよな。」
そこで俺たちはユミさんを訪ねた。
「ああ、そのことですか。」
ユミさんは少し困った顔をした。
「心当たりがあります。」
「何かあったのか?」
「ハクちゃんは特別だからです。」
「特別?」
「ええ。」
ユミさんは頷いた。
「最初の頃はみんな仲良く遊んでいました。」
しかし成長するにつれ、子供たちも気付き始めたらしい。
ハクは人間ではない。
龍なのだ。
力も違う。
寿命も違う。
食べる量も違う。
そして何より、少し怒るだけで周囲が怯えてしまう。
「子供たちも悪気はないんです。」
ユミさんは続けた。
「ただ、どう接していいか分からなくなってしまったんです。」
仲間外れにしているわけではない。
しかし自然と距離ができてしまった。
その結果――。
ハクは一人でいることが増えたのだという。
夕方。
俺は村外れの丘へ向かった。
案の定、ハクが一人で座っていた。
夕日に照らされた横顔はどこか寂しそうだった。
「隣いいか?」
「うん。」
俺は腰を下ろした。
しばらく二人で黙って空を眺めた。
子供たちとの距離。
自分だけ違うという孤独。
それがハクを苦しめていたのだ。
子供の悩みは大人よりもずっと深い。
だが、子供達で自ら解決する場合もある。
俺はハクに寄り添いながらも、もう少し様子をみることに決めたのだった。




