王都決戦
戦いの舞台となったのは、王都中央にある巨大な円形闘技場だった。
観客席には朝早くから大勢の人々が詰めかけている。
王都の民は敵討ちが大好きである。
しかも今回は、次代の王を決める戦いでもあった。
盛り上がらないはずがなかった。
「すごい人だな。」
俺は観客席から闘技場を見下ろした。
「お祭り。」
隣でユーコが頷いた。
今回は俺もユーコも出場しない。
冒険者には人殺しが認められていないからだ。
あくまで見物人である。
だが、何もしなかったわけではない。
ユーコの古代アーティファクトの眼鏡が大活躍した。
相手と味方の実力を確認し、戦力を割り振ることができたのである。
「お抱えの一人が強い。」
出陣前、ユーコはそう言った。
「誰を当てる?」
ヨッシー公が尋ねると、
「ゴザエモン。」
即答だった。
四人の浪人の中でも最強。
ゴザエモンが静かに頷いた。
「承知いたした。」
それだけだった。
まるで散歩にでも行くような気軽さだった。
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闘技場中央。
ヨッシー公側二十名。
敵側二十名。
双方が向かい合う。
緊張感が空気を震わせていた。
やがて役人が中央へ進み出た。
「ここにヨッシー公の敵討ちを認める!」
観客席から歓声が上がる。
「戦い始め!」
鐘が鳴った。
ついに戦いが始まった。
まず前に出たのは双方十人ずつ。
騎士同士の正面衝突である。
剣がぶつかり合う音が響いた。
最初は互角に見えた。
だが次第に差が現れる。
敵側の動きが鈍り始めたのだ。
「息が上がってるな。」
俺は呟いた。
技量そのものは悪くない。
だが覚悟が違った。
ヨッシー公側の者たちは、主君の未来を背負って戦っている。
敵側は野心のために戦っている。
その差は徐々に表れていた。
そして何より目立ったのは浪人たちだった。
「疾風閃!」
ゴザエモンの刀が閃く。
まるで風そのものだった。
敵の剣を弾き飛ばし、そのまま首筋に刃を止める。
「参った!」
相手が叫ぶ。
「龍神斬り!」
別の浪人が大上段から刀を振り下ろす。
轟音と共に敵の盾が真っ二つになった。
観客席がどよめく。
「乱撃斬!」
「千手観音突き!」
次々と奥義が飛び出した。
観客たちは総立ちになった。
「すごい!」
「なんだあいつら!」
「どこの剣豪だ!」
歓声が闘技場を揺らした。
そして、最大の見せ場がやって来た。
敵方最強のお抱え騎士。
大柄な男が突進する。
凄まじい威圧感だった。
しかしゴザエモンは動かない。
静かに刀を構える。
そして――
キィン!
一太刀。
それだけだった。
相手の剣が宙を舞う。
次の瞬間には刀の切っ先が喉元に突き付けられていた。
「参った。」
大男が膝をつく。
場内が爆発したような歓声に包まれた。
「おおおおおおっ!」
「見たか!」
「達人だ!」
ゴザエモンは何事もなかったように刀を納めた。
その姿はまるで昔話の剣豪だった。
やがて勝敗は決した。
敵側は次々と降伏する。
最後の一人だけが諦めなかった。
「うおおおおっ!」
絶望的な状況にもかかわらず、ヨッシー公へ突撃したのである。
だが届かない。
浪人たちが前に立ちはだかる。
騎士たちが壁となる。
ヨッシー公の剣が抜かれることすらなかった。
敵は取り押さえられ、戦いは終わった。
静寂。
そして次の瞬間。
割れんばかりの歓声が闘技場を包んだ。
ヨッシー公が中央へ進み出る。
その姿には、もはや没落貴族の面影はない。
誰の目にも王の器だった。
ヨッシー公は高らかに宣言した。
「我が勝利した!」
歓声が上がる。
「そして、この者たちの功を認める!」
ヨッシー公は騎士たちを見た。
さらに浪人四人を見た。
「この者たちを我が家臣とする!」
一瞬の沈黙。
そして、
ワァァァァァァァッ!!
今までで最大の歓声が上がった。
勝者が功臣を称える。
ヨッシー公は武勇を示し。
度量を示し。
そして民衆の心を掴んだ。
誰もが確信した。
――次の王は、この男だと。
闘技場に響く歓声は、いつまでも鳴りやまなかった。




