ヨッシー公の救出
深夜。
月明かりの下。
ホワイトバードは最低限の装備だけを持ち、王都へ向けて馬で走り出した。
「生きていてくれよ、ヨッシー公。」
俺は小さく呟いた。
ランケは今頃必死になって探しているだろう。
ようやく王となる道が見え始めたところだった。
こんなところで消えていい人物ではない。
ユーコも真剣な顔をしていた。
「ヨッシー、良い人。」
「ああ。」
「きっと無事。」
「そう願う。」
しかし俺の胸騒ぎは消えなかった。
もしこれが単なる誘拐ではなく、王位継承を巡る陰謀だったとしたら。
相手は相当な覚悟で動いている。
そしてその裏には、まだ見えていない何者かがいるはずだった。
その夜、遺跡の村では誰一人として熟睡することができなかった
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王都アレキサンダー家の屋敷。
重苦しい空気が部屋を支配していた。
ランケをはじめ、アレキサンダー家の重臣たちが集まり、その中央には救出されたヨッシー公が座っている。
その顔には疲労の色が濃く浮かんでいたが、命に別状はなかった。
そして、その隣には今回の功労者であるホワイトバード。
リクとユーコも後から王都へ到着し、その場に同席していた。
「ヨッシー公、ご無事でしたか。」
ランケは深く頭を下げた。
「ホワイトバード殿、よくやってくれた。恩に着ます。」
「たまたま運が良かっただけだ。」
ホワイトバードは肩をすくめた。
脱獄王が潜入した先は敵の本拠地。
本来なら情報を持ち帰るだけのはずだった。
だが結果として、監禁されていたヨッシー公本人を発見し、そのまま救出してしまったのである。
普通なら英雄譚として語られる出来事だった。
しかし、部屋の空気は明るくならなかった。
ヨッシー公が静かに口を開く。
「問題はここからだ。」
その言葉に全員が黙る。
ランケも険しい顔をした。
「やはり……王家の慣習ですか。」
「うむ。」
ヨッシー公は静かに頷いた。
この国には古くから伝わる王位継承の掟がある。
王位は力だけでなく、名誉によって受け継がれる。
そして――。
当主が侮辱された場合。
あるいは誘拐や襲撃などの恥辱を受けた場合。
その家は敵討ちを果たさなければならない。
敵を討たぬまま王位を継承した者は、弱者として見なされる。
ゆえに禅譲による王位継承が認められない。
古くから続く絶対の慣習だった。
したがって、今回はアレキサンダー家(ヨッシー公)が敵討ちをする必要性があった。




