消えたヨッシー公
ある日の夜だった。
遺跡の村の酒場で村人たちと話をしていると、一台の馬車が慌ただしく村へ入ってきた。
馬車から飛び降りた男は息を切らしながらこちらへ駆け寄ってくる。
「リク様! 夜分に失礼します!」
見覚えのある顔だった。
ランケに仕えている召使いである。
ただならぬ様子に俺は立ち上がった。
「何かあったのか?」
「実は……ヨッシー公が戻らないのです。」
その言葉に酒場の空気が一変した。
「戻らない?」
「はい。」
召使いは必死に説明を続ける。
「本日、ある貴族家を訪問されたのですが、それ以来行方が分からなくなっております。」
「その貴族家には確認したのか?」
「確認いたしました。」
「なんと言っていた?」
「夕方にはお帰りになられたと。」
嫌な予感がした。
「馬車は?」
「帰り道の街道脇で発見されました。」
「護衛は?」
「全員行方不明です。」
酒場の中が静まり返った。
ヨッシー公は次代の国王に選ばれた人物だ。
そんな人物が消えるなど、一大事である。
「分かった。」
俺は即座に答えた。
「こちらでも調べる。」
「ありがとうございます!」
召使いは深々と頭を下げた。
俺は地図を広げてもらい、訪問先の貴族家の位置と馬車が発見された場所を確認した。
そして召使いを休ませるため、宿へ案内させた。
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召使いが去った後、俺たちは酒場の一角に集まった。
ユーコ。
アベリア。
ホワイトバード。
「やっぱり貴族の家が怪しいだろ。」
俺は率直な感想を述べた。
ホワイトバードも頷く。
「俺もそう思う。」
「だが証拠がない。」
「ないな。」
それが問題だった。
貴族の館に踏み込むということは、国家への反逆と取られてもおかしくない。
しかも相手は王都の有力貴族である。
「もし本当に関係なかったら?」
アベリアが言った。
「こちらが犯罪者になります。」
「そうなんだよな。」
俺は頭を抱えた。
貴族の館には地下牢がある。
それは常識だった。
しかしヨッシー公がそこにいる保証はどこにもない。
感情だけで動けば、かえって事態を悪化させる可能性もある。
するとユーコがぽつりと言った。
「簡単。」
「何が?」
「見ればいい。」
全員がユーコを見る。
そして同時にホワイトバードを見る。
「あ。」
「なるほど。」
「確かに。」
ホワイトバードは嫌な予感がしたらしい。
「おい。」
だが俺はすでに決めていた。
「ホワイトバード。」
「なんだ。」
「貴族の地下牢を調べてきてくれ。」
ホワイトバードはため息を吐いた。
「面倒なことになったな。」
「お前以上の適任者はいない。」
「それは否定できん。」
元脱獄王。
牢獄の構造を知り尽くし、侵入も脱出も得意。
こんな時にこれほど頼もしい人材はいない。
ホワイトバードは椅子から立ち上がった。
「分かった。」
「頼めるか。」
「ああ。」
彼はニヤリと笑った。
「俺に任せろ。」
その顔には妙な自信があった。
さすがは脱獄王である。




