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脱獄王ホワイトバード

 子供たちに案内された先は、森の奥にある古い山小屋だった。

 屋根はところどころ傷み、壁も補修の跡だらけだ。

 だが、中は意外にも整頓されていた。

 扉を開けると、さらに十人ほどの子供たちが顔を出した。

「お兄ちゃんたち誰?」

「食べ物持ってきた!」

「ポーションもあるぞ!」

 歓声が上がる。

 そして、その奥にいた唯一の大人を見た瞬間――

「お前は、脱獄王ホワイトバード。」

 ユーコが何気なく言った。

「ぬっ!」

 男の顔色が変わった。

 俺はそちらよりも別のことが気になった。

「待て待て待て。」

 俺はユーコの肩を掴んだ。

「なんで分かった?」

「メガネ。」

 俺は中古品店でのやり取りを思い出した。

『これ買う。』

『そんなのでいいのか?』

『いい。』

 まさか。

 本当にまさかである。

「それ、古代アーティファクトか!?」

「たぶん。」

「買う時に教えろよ!」

「騒いだら値段上がる。」

 ユーコは当然のように答えた。


 アベリアも驚いている。

「鑑定の眼鏡でしょうか……。」

「たぶんそうだろうな。」

 俺はようやく気を取り直した。

 ホワイトバードは呆れた顔でこちらを見ていた。

「話は終わったか?」

「ああ、悪い。」

 俺は咳払いした。

「それで、なぜこんなことをしている?」

 俺は子供たちにポーションを配りながら尋ねた。

 子供たちは夢中で飲んでいる。

「うめえ!」

「これ売ったら金持ちになれるぞ!」

「飲むな、売れ!」

 すでに議論が始まっていた。

 ホワイトバードは苦笑した。

「こいつらはみんな戦争孤児だ。」

 その言葉で空気が少し変わった。

「戦争孤児?」

「ああ。」

 ホワイトバードは壁にもたれた。

「国境付近で小競り合いがあった。」

 この世界では珍しい話ではない。

 だが被害を受けるのは、いつも兵士だけではない。

「親を失った子供たちだけが残った。」

「……。」

「俺はたまたま通りかかっただけだ。」

 男は肩をすくめる。

「最初は一人だった。」

「一人?」

「こいつらを見捨てられなかった。」

 その言葉に嘘はなかった。


 大人たちが始めた戦争。

 大人たちの欲望。

 大人たちの争い。

 その結果、最後に苦しむのはいつも子供だ。

 俺は前世でもそんな話を何度も見聞きした。

 世界が変わっても、それは同じらしい。

 しばらく考えた後、俺は言った。

「仕事ならあるぞ。」

 ホワイトバードが顔を上げた。

「何?」

「うちの村に来い。」

「は?」

「人手不足なんだ。」

 今度はホワイトバードが固まった。

 そして周囲の子供たちも固まった。

「村?」

「ああ。」

 俺は笑った。

「ポーション工場に農地開拓、ダンジョン資源の整理、保育園まで作る予定だ。」

「待て。」

「なんだ。」

「そんな村、本当に存在するのか?」

「存在する。」

 すると横からユーコが言った。

「変人ばかり。」

「余計なこと言うな。」

「でも優しい人ばかり。」

 その言葉に、ホワイトバードはしばらく黙り込んだ。

 そして子供たちの顔を見回した。

 期待に満ちた目。

 不安そうな目。

 様々だった。

 だが共通していたのは――

 皆、家が欲しいということだった。


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