可愛い盗賊団
午後からはアベリアの買い物に付き合ったり、市場を見て回ったりしていた。
薬草の保存瓶や乳鉢、乾燥用の網など、薬師見習いとして必要な道具を揃えていく。
アベリアは一つ一つの値段を確認しながら買い物をしており、なかなか堅実な性格らしかった。
一方、その間にユーコは中古品店で何やら見つけていた。
「リク。」
「ん?」
「これ買う。」
そう言って差し出したのは、古びた眼鏡だった。
度が入っているのかどうかも分からない。
装飾もなく、特別高価そうにも見えない。
「そんなのでいいのか?」
「いい。」
結局、数枚の銅貨で購入した。
それからというもの、ユーコはずっとその眼鏡を掛けていた。
「ずいぶんお気に入りだな。」
「ふふふ。」
ユーコは意味深に笑う。
「内緒じゃ。」
「なんで急に偉そうなんだ。」
「内緒じゃ。」
「そうか。」
よく分からなかったので放っておいた。
その夜、宿でアベリアが真面目な顔をしていた。
「どうした?」
「少し気になることがありまして。」
彼女は占い札を見つめている。
「帰り道に何か良くない兆しが出ています。」
「魔物か?」
「分かりません。」
アベリアは首を振った。
「ただ、人に関係するような気がします。」
占いがどれほど当たるかは分からない。
しかし、外れても損はない。
そこで翌日は朝早く、人通りの少ない時間を選んで王都を出発することにした。
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王都を離れて数時間。
森の入口に差しかかった時だった。
「止まれー!」
突然、茂みから声が上がった。
次の瞬間。
俺たちは五人の子供たちに囲まれていた。
全員が木の棒や錆びた短剣を持っている。
年齢は十歳前後だろう。
だが、顔は真剣そのものだった。
「止まれ!」
「食糧を渡せ!」
「命は助けてやる!」
精一杯怖そうな声を出している。
しかし残念ながら全く迫力がない。
むしろ可愛い。
俺は隣のユーコを見た。
「どうする?」
ユーコは一瞬考えた後、
「美味しいポーションで懐柔する。」
「なるほど。」
「それからボスに会う。」
「わかった。」
俺はリュックから例のポーションを取り出した。
ダンジョン産の高品質ポーションである。
「お前たち。」
子供たちが警戒する。
「なんだ!」
「これは知ってるか?」
「ポーション?」
「飲んでみろ。」
「毒かもしれないぞ!」
「だったら俺が先に飲む。」
俺は一本飲み干した。
「うまい。」
「うまそう・・・」
「うまそうだな・・・」
「飲みたい・・・」
子供たちの決意がぐらついている。
「ほら。」
一本渡してみた。
リーダーらしい少年が恐る恐る口を付ける。
そして。
「うめぇ!」
目を見開いた。
「なんだこれ!」
「甘い!」
「果物みたい!」
あっという間に奪い合いになった。
「落ち着け。」
俺は追加で数本取り出した。
「いくらでも飲んでいいぞ。」
「本当か!?」
「ああ。」
「やったー!」
さっきまで盗賊だった連中が歓声を上げる。
アベリアは苦笑していた。
「これでいいんですかね?」
「たぶん。」
ユーコは真顔だった。
「お腹いっぱいになると、人は優しくなる。」
「そういうものか?」
「そういうもの。」
十分後。
子供たちは三本、四本と飲み干し、すっかり満足していた。
「兄ちゃんいい人だ!」
「盗賊やめるか?」
「それはボスが決める!」
律儀である。
「じゃあ、そのボスに会わせてくれ。」
「いいぞ!」
「来い来い!」
「早く!」
今度は子供たちが俺たちの手を引っ張り始めた。
盗賊に案内されるという不思議な状況である。
森の奥へ進みながら、アベリアが小声で言った。
「もしかして占いで出た不吉なことって、これですかね?」
「どうだろうな。」
俺は前を歩く子供たちを見た。
服はボロボロ。
靴も穴だらけ。
痩せている者もいる。
恐らく事情があるのだろう。
そんなことを考えながら、俺たちは子供盗賊団のアジトへ向かうのだった。




