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鉄の収集

 村へ帰った翌日。

 俺はさっそく村の冒険者パーティー『ハンドレッド・ストーンズ』に集まって貰った。

 元々、石化から復活した村人たちの中で唯一まともな戦闘経験を持つ四人組である。

「ダンジョンで鉄集めを頼みたい。」

 そう言うと、

「分かりました。」

 リーダーの戦士が即答した。

 それほど難しい話ではないらしい。


 しかし、俺は少し気になった。

「無理はしないで欲しい。」

「ええ。ここのダンジョンなら大丈夫です。もっとも、二百年以上前の魔法なんで、他のダンジョンでは通用しないでしょうけど。」」

 答えたのは魔法使いの女性だった。

「そんなことないだろ。」

「いえいえ。」

 謙遜しているのか、本気なのか分からない。

 ただ、ユーコは横で頷いていた。

「強い。」

「どっちだよ。」

「昔の人間、強かった。」

 ユーコの評価は意外に高かった。

 そんなわけで、鉄鉱石集めはハンドレッド・ストーンズに任せることになった。


 そして二週間後。

 大量の鉄が集まった。

 俺には品質など分からないが、純度の高い鉄は錆びやすいと聞いていたが、集められたものはあまり錆びていなかった。だから、鋳鉄だろうと思った。


 とりあえず荷車へ積み込み、町の鍛冶屋『ノルド』へ向かった。

 店に入るなりノルドが顔を出す。

「おお、持ってきたか。」

「ああ。」

 俺は荷車を指差した。

「ただな。」

「なんじゃ?」

「質は良くないかもしれん。」

 ノルドは怪訝な顔をして、荷車に近づいた。

 鉄の塊を一つ持ち上げる。

 そして光にかざした。

 次の瞬間だった。

「っつ!!」

 ノルドの目が見開かれた。

「なんじゃ、こりゃあ!」

「やっぱり駄目か?」

「は?」

「だから純度が低――」

「アホか!!」

 怒鳴られた。

「え?」

「どこをどう見たら鋳鉄になるんじゃ!」

 ノルドは震える手で鉄の塊を持ち上げる。

「こ、これは……。」

 声まで震えている。

「最高品質の玉鋼じゃ!」

「たまはがね?」

「そうじゃ!」

 ノルドの目が完全に職人の目になっていた。

 初めて会った日のような目だ。

「儂が生きている間に、こんなものを見るとは思わなんだ。」

「そんなに凄いのか?」

「凄いなんてもんじゃない!」

 ノルドは机を叩いた。

「王国中の鍛冶屋が欲しがる。」

「へぇ。」

「帝国なら戦争を起こすかもしれん。」

「そんな大袈裟な。」

 だがノルドは笑わなかった。

 むしろ顔色が悪くなっている。

「リク。」

「なんだ?」

「これをどこで手に入れたか、誰にも言うな。」

 真剣だった。

「本気だ。」

 俺も自然と表情を引き締める。

「そんなに危険か?」

「危険じゃ。」

 ノルドは即答した。

「特にロージア帝国に知られるな。」

 好戦的な国だという話は聞いている。

 もし軍事利用できる金属資源だと知られれば。

 確かに厄介なことになりそうだった。

「持って帰れ。」

 ノルドは鉄の塊を押し返した。

「全部は買わん。」

「え?」

「買えん。」

 ノルドは首を振った。

「儂の店が持つには危険すぎる。」

 そう言いながらも、職人としての欲望には勝てなかったらしい。

 ほんの少しだけ取り分ける。

「これだけじゃ。」

「いいのか?」

「十分じゃ。」

 むしろこれだけで数年は研究できるという。

 結局。

 ノルドが使う分だけ売却し、残りは持ち帰ることになった。

 帰り道。

 荷車を引きながら俺は首を傾げていた。

「鉄を持って行っただけなのにな。」

「リクといると、飽きないのじゃ。」

 ユーコが即答した。


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