鉄の受注
ユーコの小刀を受け取った後、俺たちはノルドの店でお茶をご馳走になっていた。
すると、ノルドが急に真面目な顔になった。
「実はのう、頼みがある。」
職人らしく回りくどい話をしない。
俺は湯飲みを置いた。
「なんだ?」
「最近、町では鉄の材料が不足しておる。」
ノルドはそう言ってため息をついた。
「武器も農具も注文は増えておるのじゃが、肝心の鉄が足りん。」
「鉱山はないのか?」
「あるにはある。」
だがノルドは首を横に振った。
「採掘量が足りんのじゃ。」
さらに話を聞くと、これはノルド個人の問題ではなかった。
生産ギルド全体の悩みらしい。
鍛冶屋。
大工。
建築職人。
皆が鉄不足に頭を抱えているという。
「そういえばじゃ。」
ノルドは何かを思い出したように言った。
「大昔の記録では、遺跡の村から鉄が納品されていたそうじゃ。」
「へえ。」
「知らんか?」
「いや。」
俺は即答した。
「知らない。」
村を復興してから色々調べているが、鉄鉱山の話など聞いたこともない。
「と言われてもなぁ……。」
俺は腕を組んだ。
「どこにあるか分からないし。」
すると横から冷たい視線を感じた。
ユーコだった。
「ダンジョン。」
「ん?」
「二階。」
「……。」
「全く怠け者。」
呆れた顔をしている。
「いや、待て。」
「二階行けば分かる。」
「そうなのか?」
「そう。」
そこでようやく思い出した。
遺跡の村のダンジョン。
一階はスライム階層。
ポーションとゴールドが手に入る。
そして二階からは鉱石系の資源が採れる。
確かそんな説明を聞いていた気がする。
「……忘れてた。」
「怠け者。」
「いや、忙しかったんだ。」
「ゴールド集めばかり。」
「否定できない。」
実際その通りだった。
ポーション販売が予想以上に儲かったため、一階を周回するだけで十分な利益が出ていた。
その結果。
二階以降の探索が完全に止まっていた。
ノルドは相変わらず真面目な顔で言った。
「もし鉄が採れるなら買い取る。」
鉄不足はかなり深刻なようだった。
俺は少し考えた。
鉄が採れる。
村の新たな収入源になる。
しかも職人たちも助かる。
悪い話ではない。
「分かった。」
俺は頷いた。
「鉄を納品する。」
「おお!」
ノルドの顔が明るくなる。
「助かるぞ!」
店を出た後、俺たちは村への帰路についた。
「しかし、またやる事が増えたな。エルフの里の生活が懐かしいな。」
最近は畑を耕したり、村を復興したり、人助けばかりしていた。
だが、振り返ってみれば、成長とは平穏な日々の中ではなく、次々と舞い込む課題を乗り越える中で得られるものだ。
人は前に進み続けることでしか新しい景色を見ることはできない。




