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王都の冒険者ギルド

 王都の冒険者ギルドは、地方のギルドとはまるで別物だった。

 建物だけでも城のように大きい。

 出入りする冒険者たちも、明らかに強そうな者ばかりだった。

「おお……。」

 ハクがきょろきょろと周囲を見る。

「ひろい!」

「迷子になるなよ。」

「ならない!」

 そう言いながら、すでに反対方向へ歩いていこうとしていた。

「なってる!」

 リクは慌てて抱き上げる。


 受付へ行くと、職員の女性がすぐ立ち上がった。

「リク様ですね。お待ちしておりました。」

「え?」

「ギルドマスターがお会いしたいそうです。」

 周囲がまたざわつく。

「ギルマス直々!?」

「新人だろ!?」

「何者だ……?」

 リクは嫌な予感しかしなかった。

 そのまま案内され、上階へ向かう。

 王都ギルドの最上階。

 重厚な扉の前で職員が一礼した。

「どうぞ。」

 中へ入ると、大柄な男が机の前で待っていた。

 鋭い目。

 鍛え上げられた身体。

 だがどこか豪快そうな雰囲気もある。

「私がドナルドだ。」

「えっ。」

 リクは思わず声を漏らした。

 まさか。

 この男が――

「王都冒険者ギルドのギルドマスター……。」

「そういうことだ。」

 ドナルドは豪快に笑った。


 するとドナルドは改めて椅子へ座る。

「わざわざ王都まで来てもらって申し訳ない。」

「いえ。」

「本来なら報奨金だけ送金すれば済む話だった。」

 だが、ドナルドは少し声を落とす。

「実は別件がある。」

「別件?」

「こんど、王位が禅譲されることになった。」

 部屋の空気が変わった。

 ランケがすぐ姿勢を正す。

「……!」

 リクも驚く。

 王の交代。

 つまり国の一大事だ。

 ドナルドはさらに小声になる。

「次の王に決まったのが、没落した貴族の若い当主でな。」

「……。」

「リク殿に、一度会いたいと言っている。」

「……え?」

 意味が分からなかった。

「俺に?」

「そうだ。」

 リクは混乱する。

 ただの元公務員だ。

 今は異世界の村人兼冒険者。

 そんな自分が、次期国王と会う理由が分からない。

 するとランケが小声で興奮気味に言う。

「リク殿! これは大変名誉なことですぞ!」

「いやでも。」

「次期国王ですよ!?」

「だからこそ怖いんだが!?」

 リクは本気で逃げたくなっていた。


 しかしドナルドは真面目な顔へ戻る。

「安心しろ。危険な話ではない。」

「……。」

「むしろ、お前たちの噂を聞いて興味を持ったらしい。」

「噂?」

「盗賊団壊滅。世界樹。守護獣。遺跡の村復興。」

 一つずつ並べられる。

「既に王都でも話題だ。」

「うわぁ……。」

 リクは頭を抱えた。

 全然目立たない生活になっていない。

 するとランケが咳払いする。

「リク殿。この国の王位は世襲ではございません。」

「ああ、聞いた。」

「血縁ではなく、“徳ある者”へ継承されるのです。」

 リクは前世の知識を思い出す。

 世襲制には弊害がある。

 だが民主制も万能ではない。

 結局、人間社会はどこまで行っても権力争いから逃げられない。

 だからこそ、この国では“禅譲”という形式を取っているのだろう。

「……でも、なんで俺なんだ。」

 その疑問に。

 ドナルドは少し笑った。

「さあな。」

「え?」

「だが、次の王はこう言っていた。」

 そして。

 ドナルドは静かに告げた。

『人を救う者に、一度会ってみたい』

 その言葉に。

 リクはしばらく黙り込んだ。

 自分はそんな立派な人間ではない。

 迷うことも多い。

 自信だってない。

 だが。

 ユーコが隣で言った。

「リク、会えばいい。」

「ユーコ。」

「悪い人かどうか、会えば分かる。」

 ハクも元気よく手を上げる。

「おうさま!」

「お前は観光気分だな。」

「おいしいもの!」

 それが目的らしい。

 するとランケがぐっと拳を握った。

「リク殿、何を迷っておられるのです!」

「うおっ。」

「こんな名誉なことはありませんぞ!」

 圧が強かった。

 結局。

 押し切られる形で、リクたちは次期国王と会うことになったのだった。


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