王都行き
遺跡の村へ、一通の書簡が届いたのは、盗賊団スリーピース討伐から数日後のことだった。
「リク殿宛てです。」
ランケが封筒を持ってくる。
表には、冒険者ギルドの紋章が刻まれていた。
「また何かあったのか?」
リクは椅子に座りながら封を切る。
ユーコは隣で果物を食べていた。
龍の幼女は床でごろごろ転がっている。
「ぱぱー、これあまい。」
「それ世界樹の果実だからな。高級品だから大事に食えよ。」
「はーい。」
完全に普通の家庭だった。
リクは苦笑しながら手紙を読む。
だが。
「……ん?」
表情が少し変わる。
「どうした。」
ユーコが顔を上げる。
「盗賊団の件だ。」
「報酬?」
「ああ。」
リクは手紙を読み直した。
『盗難品の多くが王都で盗まれた高額品と判明』
『王都ギルドにて正式な確認と報奨金支払いを行う』
『ついては、討伐者本人に王都まで来ていただきたい』
「……王都?」
思わず呟く。
この世界へ来てから、最も大きな都市の名前だった。
今までは地方都市と遺跡の村を行き来していただけ。
王都となると話が違う。
国の中心だ。
「ついに都会デビュー。」
ユーコがぽつりと言った。
すると龍の幼女がぴくりと反応する。
「おうと?」
「大きい町だ。」
「おっきい!?」
目を輝かせる。
「行く!」
「いや、お前連れて行けるかな……」
絶対騒ぎになる。
どう見ても三歳児だが、中身は古代龍だ。
しかも火を吐く。
問題しかない。
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夜になるとサトルとユミが部屋へ入って来た。
「王都へ行くのですかな?」
「話早いな。」
「村で噂になっております。」
サトルは少し懐かしそうに窓の外を見る。
「百年前の話ですが、王都は良いところですぞ。」
「行ったことあるんですか?」
「ええ。かなり昔ですが。」
この世界へ来てから数十年。
サトルは各地を旅したことがあるらしい。
「大きな図書館もありますし、学者も多い。」
「へぇ。」
「ただし。」
サトルの顔が真面目になる。
「目立ち過ぎぬことです。」
「……。」
「守護獣持ち。世界樹。高品質ポーション。盗賊団壊滅。」
一つずつ並べられていく。
「既に十分、危険なほど目立っております。」
「うっ。」
自覚は少しあった。
特に最近。
色々やり過ぎている。
「あと龍。」
ユーコが追加した。
「それが一番危険では!?」
すると龍の幼女が胸を張る。
「がおー!」
「かわいい。」
ユーコが即答した。
完全に甘い。
だがリクは悩む。
確かに龍を連れて王都へ行けば大騒ぎになる可能性が高い。
「村に置いていくか……?」
その瞬間、龍の幼女の顔が曇った。
「……おるすばん?」
「いや、その。」
「やだ。」
ぎゅっ。
リクへ抱きつく。
「ぱぱといく。」
「……。」
リクは弱かった。
するとユミまで口を開く。
「子供を置いて長旅は可哀想ですよ?」
「いやこの子、龍なんですけど。」
「でも寂しいんですよ。」
「うっ。」
保育士は強かった。
リクは頭を抱える。
(……なんか大事になってきたな。)
しかし。
内心では少しだけ楽しみでもあった。
異世界の王都。
どんな場所なのか。
どんな人々がいるのか。
リクは手紙を見つめながら、小さく息を吐く。
「……よし。」
そして顔を上げた。
「王都、行ってみるか。」
その瞬間、龍の幼女が飛び跳ねた。
「おうとー!!」
こうして。
リクたちの、初めての王都行きが決まったのだった。




