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龍の子

 盗賊団スリーピースのアジトへ戻った頃には、すっかり昼になっていた。

 森の中へ光が差し込み、砦の影が短く伸びている。

「気になるんだよ。」

 リクは砦を見上げた。

 盗賊たちは制圧した。

 人質も救出した。

 だが、何か引っかかっていた。

(まだ、何かある気がする。)

 そういう直感だけは、昔から妙に当たる。

 だからリクは、もう一度アジトを調べ直すことにしたのだ。

「地下行く。」

 ユーコが鼻をひくつかせる。

「ん?」

「変な匂い。」

 二人は、砦の奥へ進む。

 そして、以前は気づかなかった隠し扉を発見した。

「こんなのあったのか。」

 棚をずらすと、地下へ続く階段が現れる。

 冷たい空気。

 薄暗い通路。

 かなり奥まで続いていた。

「……盗賊の隠し倉庫か?」

 だが、部屋へ入った瞬間。

 二人は足を止めた。

「……でか。」

 中央に、巨大な卵が置かれていた。

 人間の胴体ほどある。

 深い蒼色。

 表面には、うっすら金色の紋様が浮かんでいた。

 しかも。

 周囲の空気が微妙に震えている。

「魔力すごい。」

 ユーコが目を細める。

 リクも近づいてみた。

「鑑定。」

《古代龍の卵》

《極めて希少》


「……龍?」

 思わず変な声が出た。

「盗賊、なんでこんなの持ってた。」

「売るつもりだったのかもな……」

 龍は、この世界では伝説級の存在だ。

 そんなものが、なぜ盗賊のアジトにあるのか。

 その時だった。

 ピシッ。

「ん?」

 卵にヒビが入る。

「……おい。」

 ピシ、ピシピシッ。

 次々と亀裂が広がっていく。

「孵化する。」

「今!?」

 次の瞬間。

 バキィン!!

 殻が弾け飛んだ。

「キュオオオ!!」

 中から飛び出してきたのは――

 小さな龍だった。

 真っ白な鱗。

 蒼い瞳。

 まだ子犬くらいのサイズだが、翼まである。

「……。」

「……。」

「キュ?」

 龍の子供は、きょろきょろ周囲を見る。

 そして。

 真っ先にリクへ突進した。

「うおっ!?」

 どすん。

 胸へ飛びついてくる。

 さらに、ペロペロペロ!!

「舐めるな、くすぐったい!」

「懐いた。」

 ユーコが冷静に言った。

 龍の子は、完全にリクへ甘えている。

 どうやら最初に見た相手を親だと思ったらしい。

「いやいやいや、待て待て。」

「キュオ!」

「返事するな!」

 すると、龍の子は、今度はユーコのほうを見る。

 じーっ。

「?」

 数秒後、ぱたぱた飛んでいき――

 ユーコの頭へ乗った。

「キュ。」

「……重い。」

 しかし降ろさない。

 むしろ少し嬉しそうだった。

「完全に親認定されたな……」

 リクが頭を抱える。


 その時、龍の子が突然、口を開く。

「キュオッ!」

 ボッ!!

 小さな炎が飛んだ。

「熱っ!?」

 リクの服の端が燃えた。

「生まれたばかりで火吹くの!?」

「才能ある。」

 ユーコが真顔で頷く。

 その後、二人は悩んだ。

「……どうするこれ。」

「育てるしかない。」

「だよなぁ……」

 捨てる選択肢は無かった。

 すると龍の子が、また甘えた声を出す。

「キュ〜♪」

 しかも。

 リクの服を咥えて離さない。

「完全について来る気だ……」

 その様子を見て、ユーコがぽつりと言った。

「家族増えた。」

「いや軽く言うなよ。」

 だが。

 リクも少し笑っていた。

 異世界へ来て、神獣と出会い、村を復興し、そして今度は龍。

(……俺の人生、どうなってんだほんと。)

 そんなことを思いながら、リクは、小さな龍をそっと抱き上げた。

 すると龍は安心したように目を細め、

 そのまま、リクの腕の中で眠ってしまった。


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