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盗賊団スリーピース

 ユーコの学校が決まり、リクは久しぶりに肩の力を抜いていた。

 土曜学校。

 そこから通常クラスへ編入予定。

 クリスティーナも協力してくれる。

(これで少し安心だな……)

 そう思っていた矢先だった。


「――リク!!」

 聞き覚えのある声。

『疾風ウルフ』のガルドだった。

 その表情は険しい。

「どうした?」

「急ぎの話だ。」

 ガルドは周囲を確認してから、低い声で言った。

「盗賊団が動いてる。」

 空気が変わる。

「……盗賊団?」

「ああ。」

「情報屋の話によると、大物盗賊団“スリーピース”が、遺跡の村を狙ってるらしい。」

「スリーピース……」

 ランケが青ざめる。

「知ってるのか?」

「有名です……。村や商隊を襲い、女や子供まで攫う凶悪集団です。」

 リクの表情が消える。

 セシリアが続けた。

「遺跡の村がポーションで稼いでいるって話が広がったんでしょうね。」

「……。」

「情報では、一週間以内に襲撃予定だそうだ。」

 その瞬間。

「相手のアジトはどこだ!」

 リクが珍しく声を荒げた。

 周囲が静まる。

 ガルドが眉をひそめた。

「アジトを聞いてどうするつもりだ。」

「決まってる。」

 リクの目が据わる。

「叩き潰す。」

「おい。」

「相手は“大物盗賊団”スリーピースだぞ。」

 その言葉を聞いた瞬間。

 リクの中で、何かが切れた。

「……はぁ?」

 低い声だった。

「悪いやつに“大物”なんて付けるな。」

 空気が張り詰める。

「悪事を働くやつは、どこまで行っても“小物”だ。」

 ガルドですら、一瞬言葉を失う。

「俺とユーコで十分だ。」

 そう言い放ち、リクは踵を返した。

「お、おい!」

「待て、リク!」

 だが止まらない。

 リクはそのまま武器庫へ向かう。

 頭の中では、ずっと同じ言葉が回っていた。

(何が“大物”だ。)

 昔から嫌いだった。

 悪党を必要以上に恐れ、勝手に大物扱いし、

 結果、誰も逆らえなくなる空気。

(悪党は悪党だろうが……!)

 村には、ようやく笑顔が戻り始めたのだ。

 子供たちも笑っている。

 学校へ行こうとしているユーコもいる。

 それを奪わせる気はなかった。

「ユーコ、行くぞ。」

「うん。」

 ユーコも静かに頷く。

 その時だった。

 ガシッ。

 後ろから肩を掴まれる。

「……何だ。」

 振り返ると、ガルドだった。

「お前だけ行かせるか。」

「……は?」

 さらに。

「面白そうじゃねぇか。」

 ボルグが笑う。

「盗賊退治なら、冒険者の本分だろ?」

 セシリアも杖を肩へ担ぐ。

「村には借りがありますしね。」

 リクは少し驚いた。

「お前ら……。」

 するとガルドはニヤリと笑った。

「『疾風ウルフ』を舐めるな。」

 どうやら完全に戦闘モードらしい。

 ランケも慌てて駆け寄る。

「わ、私も――!」

「ランケは村に残れ。」

 リクが即答する。

「えっ。」

「村を守るやつも必要だ。」

 ランケは悔しそうな顔をしたあと、深く頭を下げた。

「……必ず、ご無事で。」

「ああ。」

 その夜。

 リクたちは、盗賊団スリーピースのアジトへ向かった。

 月明かりの森。

 吹き抜ける夜風。

 そして、リクの頭の中では、まだ怒りが燃えていた。

(絶対に許さねぇ。)

 その頃、森の奥。

 巨大な砦では、

「へへ……遺跡の村か。」

 盗賊たちが酒を飲みながら笑っていた。

「最近、かなり儲かってるらしいな。」

「女も金も山ほどありそうだ。」

 だが、彼らはまだ知らない。

 今、自分たちへ向かって来ているのが、

 “神獣”。

 “世界樹の加護持ち”。

 そして、怒らせてはいけないタイプの、元日本人だということを。


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