ポーションの売却
遺跡の村の復興には、当然ながら金が必要だった。
木材はリクのスキルで潤沢だった。
食料も《世界樹の果実》や畑で少しずつ安定してきた。
だが。
「釘が足りない」
「布もない」
「鍋も欲しい!」
「塩が切れたぞー!」
文明レベルの問題が次々出てくる。
「……現金って大事だなぁ」
リクはしみじみ呟いた。
「かなり大事」
ユーコも真顔で頷く。
そこで。
リクたちは、ダンジョンで大量に手に入れたポーションと空き瓶を売りに、東の町へ向かうことになった。
荷車いっぱいのポーション。
全部スライム産である。
「これだけあれば結構稼げるんじゃないか?」
「初級ポーション、そんな高くない」
ユーコは冷静だった。
実際。
ダンジョンポーションは初心者向けの消耗品らしい。
町へ到着して、商業ギルドへと向かうと、たまたま卸市をやっていた。
よそ者は参加出来ないと追い出されそうになったが、異変が起きた。
「……なんだこれ」
薬屋の店主が、ポーション瓶を見て固まったのだ。
「え?」
「この瓶……どこで手に入れた?」
店主は震える手で瓶を持ち上げる。
透明度が異常に高い。
しかも。
ほんのり青く光っている。
「ダンジョンで拾った」
「拾ったぁ!?」
店主が叫ぶ。
「こんな高純度ガラス、王都レベルの工房でも滅多に作れんぞ!?」
「えっ」
リクとユーコは顔を見合わせる。
完全に知らなかった。
どうやら、百年前のダンジョン産アイテムは、現代より技術レベルが高いらしい。
「しかも装飾が細かい……」
店主は瓶を光へ透かす。
底には、小さな紋章まで刻まれていた。
「古代文明製か……?」
周囲の客まで集まってくる。
「なんだなんだ?」
「綺麗……」
「宝石みたい」
女性客たちがざわついていた。
だが、問題は中身だった。
「まあ、でも中は普通の回復ポーションだろ?」
店主が蓋を開ける。
ふわり。
甘い香りが広がった。
「……ん?」
店主が固まる。
「どうした?」
「香りが良い」
「ポーションに香りとかあるの?」
「普通は薬臭い」
言われてみればそうだった。
リクたちは慣れてしまっていた。
毎日飲んでいたから。
店主は恐る恐る一口飲む。
「……っ!?」
次の瞬間。
店主が目を見開いた。
「うまい!!」
「えぇ!?」
店内がざわつく。
「ポーションが美味いだと!?」
「そんな馬鹿な!」
さらに店主は興奮した顔で叫ぶ。
「雑味がない! しかも回復速度が早い!」
「違い分かるの?」
「薬師を舐めるな!」
薬屋が大騒ぎになった。
「全部買う!!」
「いや待て!」
「うちにも売ってくれ!」
他の商人まで集まってくる。
「一本いくらだ!?」
「え、えーっと……」
リクは困った。
相場が分からない。
結局、普通の初心者ポーションの二十倍近い価格で売れた。
「えぇ……」
リクは金貨袋を見つめる。
重い。
しかも、予想外の事態まで起きた。
「リクさん!」
若い女性店員が駆け寄ってくる。
「この瓶、譲ってくれませんか!?」
「え?」
「飾りたいんです!」
さらに別の女性客も言う。
「インテリアに欲しい!」
「花瓶にしたい!」
どうやら。
瓶そのものに価値が出始めていた。
「……ポーションより瓶が人気では?」
「瓶かなり綺麗」
実際、宝石みたいだった。
その後。
町では、《遺跡産クリスタルポーション》として噂になった。
“美味しい”
“回復力が高い”
“瓶が美しい”
完全に高級ブランドである。




