世界樹の治療
世界樹の治療は、とんでもなく地道だった。
「《植物再生》」
ぴかー。
《回復率:0.04%》
「全然増えねぇ……」
リクはがっくり肩を落とす。
毎日少しずつ。
本当に少しずつしか回復しない。
どうやら世界樹は規模が大きすぎるらしい。
普通の植物なら一瞬で治るスキルも、相手が世界そのものみたいな存在だと話が違った。
「まあ、でも前より葉っぱ増えた」
ユーコが木の実を食べながら言う。
「そうなのか?」
「元気になってる」
実際、エルフたちも少しずつ明るくなっていた。
最初は警戒されていたリクだったが、今では完全に里の住人扱いである。
「リクー! 畑手伝ってー!」
「また!?」
エルフの子供たちに呼ばれる。
なぜかリクは畑仕事担当になっていた。
しかも。
《植物再生》が農業チートだった。
「なんで昨日植えた野菜が今日育ってるんだ……」
「神代技能だから」
ユーコが当然みたいに言う。
結果。
リクはエルフたちから“畑の救世主”扱いされ始めた。
一方。
ユーコはというと。
「……また寝てる」
昼寝していた。
世界樹の枝の上で丸くなっている。
ほぼ猫だった。
平和だった。
朝は世界樹の治療。
昼は畑仕事。
夜はエルフたちと食事。
時々、森へ薬草採取。
たまにユーコと狩り。
そんな生活が続いていく。
そして。
リクは少しずつ変わっていた。
以前みたいに、将来への不安ばかり考えなくなっていたのだ。
誰かの役に立っている。
それを実感できる毎日だった。
ある日の夕方。
リクは世界樹の根元に座り、夕焼けを眺めていた。
「……平和だなぁ」
「うん」
隣でユーコも空を見上げる。
風が枝葉を揺らす。
ざわざわ、と優しい音が響く。
すると。
世界樹から、一枚の葉が落ちてきた。
黄金色の葉だった。
それを見たユーコが小さく呟く。
「世界樹、喜んでる」
「分かるのか?」
「なんとなく」
リクは葉を手に取る。
暖かかった。
まるで、
世界樹そのものが、喜んでいるみたいに。




