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エルフと世界樹

 「待て!」

 鋭い声が森へ響いた。

 リクとユーコが振り返る。

 いつの間にか、数人のエルフたちが弓を構えていた。

 銀髪に長耳。

 森と一体化したような装束。

 明らかに普通の人間ではない。

「侵入者だ!」


 緊張が走る。

 リクは慌てて両手を上げた。


 その時、一人の女性エルフが前へ出た。

 他の者より落ち着いた雰囲気を持っている。

 おそらく長だろう。

「私は世界樹の里の長、エレナ」

 深い緑の瞳が、リクを見据える。


「なぜ世界樹へ近づく」

 その声には警戒だけでなく、どこか疲労も混じっていた。

 リクは正直に答える。

「世界樹の雫を探してました」

 エルフたちがざわつく。

 だがエレナは黙ったまま、リクたちを観察していた。

 その時。

 リクは世界樹を見上げ、違和感に気づく。

「……あれ?」

 巨大樹の枝先。

 一部の葉が黒く変色している。

 近くで見ると、幹にもひび割れがあった。

 まるで病気みたいだった。

「世界樹って……弱ってるのか?」


 空気が凍る。

「黙れ」

 エルフの一人が鋭く睨む。


 だがリクは無意識に呟いていた。

「《植物鑑定》」

 次の瞬間。

 視界に文字が浮かぶ。

《世界樹》 《状態:魔素汚染》


「え……?」

 リクは戸惑いながら説明した。

「世界樹、病気です。でも……治せるか試してみたい」

 エルフたちがざわめく。

「馬鹿な」

「人間ごときが」

 だがエレナだけは真剣だった。

「……方法は」

「俺のスキル《植物再生》を試してみたい」

 リク自身も半信半疑だった。


 エレナはしばらく沈黙し、やがて静かに言った。

「……試してください」

 リクは世界樹へ近づく。

 巨大すぎる幹。

 まるで山だ。

 そっと手を触れる。

 すると。

 世界樹の苦しみが流れ込んできた。

 長い年月。

 少しずつ蝕まれてきた痛み。

「っ……!」

 リクは歯を食いしばる。

「リク?」

 ユーコが心配そうに見る。

 リクは息を吐き、スキルを発動した。

「《植物再生》」

 淡い緑光が広がる。

 世界樹の枝葉がざわめいた。

 黒く変色していた部分が、わずかに緑を取り戻す。

 だが。

 それだけだった。

「……終わり?」

 リクが呟く。

 すると再び文字が浮かぶ。

《回復率:0.03%》

「少なっ!?」

 思わず声が出た。

 エルフたちも微妙な空気になる。

 だが。

 エレナだけは目を見開いていた。

「……回復している」

「え?」

「確かに、世界樹の生命力が戻っています」

 彼女の声は震えていた。

 約百年の間、誰にも治せなかった病。

 それが、ほんの少しでも改善したのだ。

「でもこれ、一年くらいかかるぞ……?」

 リクがそう言うと。

 エレナは静かに頭を下げた。

「お願いします」

「え?」

「一年でも百年でも構いません」

 エレナの声は真剣だった。

「どうか、世界樹を救ってください」


 こうして、リクとユーコは、エルフの里で暮らすことになった。


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― 新着の感想 ―
え?疾風さん達との契約は良いの?
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