表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はみ出し者のリベリオン  作者: 花束 いと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/6

第3話 コンビニが、閉まって……!?

 この国のことを、知らねばならない。


 すっかり陽が昇ってしまった、明るいキッチン。

 青年はひとり食器を洗いながら、思った。


 隣の部屋では、騒音レベルのいびきがとどろいている。







 社会王国と社不王国は、あまり違いがないように思えた。

 言語は通じるし、時差はなく、季節や建物も同じ。アパートの近くには、見慣れたコンビニとスーパーがある。

 この国に来たばかりの青年にとって、社不王国とは、隣県のような認識だった。


 そう、五秒前までは。



「……コンビニが、閉まってる」



 ドアに貼り付けられた『ダルい』という文言に、力なくマイバッグを落とす青年。



「ダルいからお店を閉めるって……」



 そんなんじゃあ、仕事が出来ないだろう。

 仕事なんて常にダルいのだから。

 青年は眉を寄せ、首を傾げる。この国の人間は、どうやって生きているのだろう。



「これは落とし物? それともワタシへの恵み物?」

「うわっ」



 足元で声。予想外の出来事に、青年はバランスを崩して尻もちをついてしまった。

 アスファルトに打ち付けられた尻が痛い。尻をさすっていると、目の前の人物──褐色肌の少女が、くすくすと肩を揺らした。



「恵み物ってことにしておくね」

「そ、れは……困ります」

「! 敬語だ」



 少女が目を見開く。そして、握ったマイバッグをくしゃくしゃにしながら、「ねえ!」と青年に近づいた。

 突然の大声。突然の接近。思わず、青年の息が止まる。少女は鼻の先が触れそうなくらいに距離を縮めると、瞳を輝かせて言った。



「お前、まだ社不王国に来たばっかでしょ!」

「え、まあ……」

「社会王国の人だ!」

「? はい」

「おおお!!」



 少女が鼻息を荒くする。素早く立ち上がると、もう抑えきれないといった様子で困惑する青年に「こっちおいで」と足踏みをした。



「マイバッグ返してください」

「くれたんじゃないの?」

「落とただけです」

「えー」



 あからさまに残念そうに口角を下げる少女。

 魚のデフォルメイラストが小さく印刷された、なんの変哲のないマイバッグだが……少女は手放すのが惜しいのか、両手でぎゅっと握る。


 だが、マイバッグに注がれていた視線が、急にコンビニのドアの右上に設置された監視カメラへと移った。

 数秒間カメラを見つめて動かない少女。冷たい風が、青年と少女の間を通り抜ける。



「……まあ、いいや。返してあげる」



 少女は、小さくため息を吐く。

 そして、青年にマイバッグを差し出した。遅れて、青年はそれを受け取る。



「ありがとう、ございます……?」

「早く入って! ここだと色々気になる」



 監視カメラのことだろうか、と青年はきょとんとした表情を浮かべる。しかし、少女に急かされて渋々コンビニの中に入ることにした。


 店内では楽しそうなBGMが流れていて、お客さんが数人、買い物をしている。社会王国とまったく同じ光景に、「おお」と息を吐いた青年だったが──ここでふと、我に返った。



「コンビニ開いてるんですか!?」



 カウンターに向かっていた少女が、面倒そうに青年の方を振り返る。



「開いてるに決まってるでしょ。

 『ダルい』としか書いてないんだから」



 青年はゆっくりと、天井を仰いだ。

 ツッコみたいことはあった。休業しないなら変な張り紙をするなとか、ダルいなんて書くなとか、言いたいことは他にもあった。


 だが。



「アタシ、なにか間違ってること言ってる?」

「……いえ」



 青年は結果として何も、言い返せなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ