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世界が美しくなる時

気が付くと神社の参道に座り込んでいた。色季と兄貴が慌てて駆け寄り、体の傷を確認してくる。幸い大事には至って居ないため、その場に居た銀庭に治療を頼む。

治療を受けながらあたしは二人を見る。二人の顔には懺悔の顔。共にこの場を訪れたのに、何もしてやれなかったと語っている。

「気にしなくていい。ケジメ、付けられたしね」

「そっか.......あたしはお会い出来なかったけど」

神を使役しながら、神を尊ぶ色季は救えなかった事を気にしているらしい。それを慰めるように兄貴が髪を撫でた。兄貴の目は賞賛するような、安堵のような、沢山の気持ちが混ざっていた。

「過ぎ去りの神だからね。あたしみたいに、目が悪い奴らじゃ無いと分からないのさ」

クソみたいな世界だと幾度となく呪った。普通の目を沢山羨んだ。それでもこの目で良かったと初めて思った。皮肉にもあの神様のお陰だ。

兄貴はそっと頬を撫でると、頭を撫でた。優しい、慈愛に満ちた指に。飛梅様を連想させる。

「辛くなかった? ケジメ付けるとき」

「あたしはあの人の中身に惚れたんだ。側だけ同じだって何の意味もない。中身があの人じゃないなんて、なんの意味もない。だからしんどく無かったよ。好き勝手されてる方が辛かった」

相対して居ないにも関わらず、兄貴は全てを見通しているようだった。名付けが“慧”なだけある。

側だけは紛うこと無く神擬きだった。でも中身が余りにも違い過ぎた。あの神様は初めて会ったあたしを取り込まなかった。霊力のある子を取り込めば、人に認識されるにも関わらず。ただ存在を知られた事を喜び、その代わりに術を教えた。

だから良いのだ。辛くなんかない。何も出来ない思念の絞りカスだけになってしまっても。

「思いだけになったとしても、あたしに連れ出されたこと、喜んでくれるかな?」

その答えは誰も分からない。でも数珠に宿った思念が、仄かに暖かい気を放つ。嬉しいよ。とでも言うように。

自分の認識で、世界の見方って如何様にも変わると思います。

今、凛は芥の中で光の粒を見つけた感じ。

だから、世界は少しだけ綺麗に見えていると思います。

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